『え?なに?咲羅が作ってくれたの?』


15回目の誕生日に合わせて
家庭科が不得意な私が一週間もかけて作り上げた不恰好なクッションを、真大はいつもより顔をクシャクシャにして喜んでくれた


その日から入院する時も、食事の時もいつも手放さなかったそれには

真大の温もりが残っているよう


私が真大と一緒に旅立たせようとしたのを
叔母さんはどうしてもと止めた

そのことを今はとても感謝している


ベッドを背もたれに
クッションを抱いていると叔母さんが部屋に入ってきた


「咲羅ちゃん」


机の上の写真立てを取ると「あのね」と腰を下ろした


「ん?」


「それ、この前掃除してたらね?」


「・・・はい」なんだろう


「後ろを開けてみて」


その声に写真立てを裏返して
留め具を外してみる


「・・・これ」


中から『咲羅へ』真大の文字が出てきた


「咲羅ちゃん宛てなの
良かったら読んであげて」


それだけを言うと叔母さんは部屋を出て行った


「真大」


レポート用紙を折りたたんだだけのそれは
鉛筆で書かれていて


7年振りに見た真大の文字が
溢れ始めた涙で歪んでいく


今すぐ見たいのに
怖くて見られない


真逆の感情に胸が苦しくて


読む勇気が持てたのは
長い針が二周も回った頃だった