七月七日



大好きな彼が空に昇った日




彼が大好きだった向日葵の花束を持って
今年も彼の眠る場所へとやって来た


七年も経ったのに
綺麗なままの其処は

時間の経過を曖昧にする


「ほら見て、向日葵
こんなに暑いと空に映えるね」


手早く生けて、蝋燭に火を灯す
お線香に火をつけ
目の前に腰を下ろすと、そっと手を合わせた



「ねぇ、真大《まひろ》そっちはどぉ?」


病気がちな真大が逝って七年

入退院を繰り返していたから、まだ入院してるんじゃないかって
現実と向き合えない時もあった

ただ、時というものは恐ろしいもので

あんなに泣いたはずなのに
あんなに側に行きたかったはずなのに

私は今も生きていて

その時間経過にやるせなくなる


『僕と結婚したら咲羅は
サクラサクラになるんだよ?』


フフと笑った真大の顔も声も思い出せるのに

その手の温もりを


今は、思い出せない



「佐倉咲羅《サクラサクラ》って面白い名前になりたかったんだよ?」


真大と居られるなら
そんなことどうでも良かった


ジリジリと焼け付くような暑さの中
久しぶりの真大との会話は


疲れていた身体を緩めてくれた


「さて」


お墓参りを済ませると毎年真大の実家を訪問する


「いらっしゃい」


「ご無沙汰しています」


仏壇用は小さな向日葵の花束にしてもらった


それを叔母さんに手渡すと
そのまま二階へと上がる


一番手前にある真大の部屋は
七年経った今でも真大が居た頃のままで


中に入った瞬間


堪えきれない涙が頬を伝った


「・・・馬鹿」


この部屋はさっきまで忘れていた
真大の“匂い”がする


思い出せない温もりと匂い


その二つに触れた気がして
真大の大事にしていたクッションを抱きしめた