ーーーーー翌日



恒例になりつつあった
夕方の通用口の群れの中に


トキは姿を見せなかった


「お疲れ様でしたぁ」


「お疲れ」


「てか、立川先生。疲れてません?」


「平気」


「そぉですかぁ?なら良いけどぉ」


今日はやたら気合いの入った姿の上松さんは


どうやら合コンがあるらしい


らしいって言うのは彼女から直接ワードを聞いた訳じゃなくて

会話を繋げれば行き着いたってこと


中央駅向こうの繁華街まで
歩くらしい上松さんと

何故か並んで歩くことになったんだけど


「あれからどうなったんですかぁ」
「Nightの総長なんですよぉ」
「イケメンって見てるだけでお腹いっぱいですぅ」


彼女の口から出るのはトキの話が大半で飽きてきた


「知らない」


「ぇえ!!!知らないって立川先生のこと
あんなに毎日迎えに来てたじゃないですかぁ」


「迎えって、一緒に帰ったことなんてないし
あれはただの待ち伏せでしょう?」


「あ゛〜〜、立川先生が残念過ぎるぅ
良いですかぁ?よ〜く聞いてくださいねぇ
Nightの総長で白夜会一ノ組の息子の翔樹さんはぁ、この街の女の子なら誰でも恋焦がれる相手なんですぅ」


白夜会・・・ってアレよね


「知らない」


「その恋焦がれる翔樹さんがご執心な立川先生は
もちろん妬まれてはいるけどぉ
二人が並ぶと敵わないって有名になってるんですよぉ」


「・・・は?」


ご執心?有名?なんのこと?


「って、もしかして、気づいてなかったとか?」


「なにに?」


「翔樹さんの気持ちですよぉ」


「知らないわよ」


「モォーーーーーっっ、立川先生って鈍感なの?それともアザと女子ぃ?」


彼女の言いたいことが全くもって分からない


「ハァ、もう良いですっ
女を売りにしてない立川先生が好きだから許しますけどっ
もうちょっと周りに意識を向けてくださいねっ」


いつの間にか家を通り過ぎ、駅に到着していて
全く語尾を伸ばさない上松さんに驚いているうちに


「じゃあまた来週〜」


彼女はキラキラした笑顔で手を振って駅向こうへ歩いて行ってしまった


「ハァ」


なんだかドッと疲れがきた


重い脚を引き摺りながら
駅北に聳え立つマンションへと踵を返した