side 翔樹



サクラと初めて会った歯科検診の日の翌日から


俺は自分の気持ちを確かめる為に毎日サクラに会いに来た


通用口で待ち伏せする俺に、初めは驚いた顔を見せたサクラも


その翌日からは風景でも見るように無反応を決め込んでくる


なによりウザイのは
一緒に出てくる看護師達が周りを囲んで

三日目にはサクラに近づくこともできなくなった


所属する街の自警団的存在のNight


代々受け継がれてきたことの中に
引退するまでは好きにさせるというのもあって

アイドルでも追っかけるみたいに付き纏う熱狂的なファンもいるから

学校でも、街へ出てもこの状況は
俺たちにとっての通常

だから・・・サクラの変化に気付けないでいた


いや・・・


当たり前になり過ぎて
周りの状況を把握できないなんて

俺の世界では致命的だ


ジジィにそれを指摘された日


「迷惑、か」


そう聞いた俺に、サクラは苦しそうに目を伏せただけだった


・・・クソッ


苛々する気持ちをどうにか抑えて
呼び出された店へと向かう


着いた先で待っていたのは


「しけた顔してんなぁ」


三人揃うのは久しぶりの先代達だった


「一人暮らしはどうだ」


俺の実家である白夜会一ノ組の敷地内にある別宅で暮らしている従兄弟の優樹《ゆき》さん


「別に」


「可愛くねぇなぁ、昔はあんなに可愛いかったのに」


ククと笑いながら揶揄ってくるのは
三ノ組木村組の息子、永飛《えいと》さん


そして、最後に


「そろそろ限界かと思っていました」


低い声で核心を突いてくるのは
二ノ組郡夜組の息子、朝陽《あさひ》さんで
俺の双子の姉の奏《かな》の彼氏だ


この三人は、いつも俺が弱ったタイミングで揃って呼び出してくる


特に朝陽さんは欲しい情報をピンポイントで与えてくれるから敵わねぇ



「サァ、今夜はとことん翔樹の話聞いてやるから」



優樹さんが俺の肩に手を置いた瞬間


胸の中で燻っていた思いが溢れてきた






side out