膝の怪我を庇いながら祖母と向かい合う人達との中間に腰を下ろした


私の向かい側には
久しぶりに顔を見る父

そして、翔樹のお父さんと橘院長
更に昴君のお父さんともう一人、確か朝陽君のお父さんが斜め後方に控えている

重い空気しか感じないのに

何故か今の私には
祖母以外が全員味方に思えた


「咲羅」


正面から静かに私を呼ぶ父


久しぶり・・・なんて言わないけど
しばらく振りに見た父の頭は随分白くなっていた


「怪我、大丈夫か」


「うん」


「他は変わりないか」


「うん」


泣いちゃダメなのに
小さな頃から優しかった父の声に

堪えきれず、涙が落ちた


「咲羅、輝大さんはどうしたの」


久々の再会に水を差す祖母は
責めるような口調で視線を鋭くした


「お詫びして帰って来ました」


「お詫びって?」


「輝大さんとは結婚できません」


「咲羅」


今回は・・・いや
もう祖母の言いなりにはなりたくない


「私、お付き合いしている人がいます
だから、輝大さんと結婚はできません」


「お付き合い?まさか、それが
こちらの息子ってこと?」


そのひと言で、翔樹のお父さんがここに来た訳が繋がった


「はい」


私の返事を待って
父は翔樹のお父さんにストーカーから守って貰ったお礼を言って頭を下げた


「伊吹《いぶき》なにを言うの
怪我もストーカーも橘の所為
他は関係ありません」


そんな父を叱りつける祖母は
翔樹のお父さんを睨みながら“他”と言葉を濁したあと


「今後一切、うちと孫に関わらないと誓うなら許しますが
孫を誑かしたことも合わせて、そちらも警察に被害を訴えることにします」


“警察”を盾に取り、まるで自分が正しいと言わんばかりに口角を上げた


その姿は・・・とても滑稽で
微かに残っていた家族と言う名の希望が綺麗さっぱり消えた


・・・もう良いよね


ここは息が詰まる



だから・・・私を切り捨てて貰おう


心が決まるのは直ぐだった






「ストーカーって何のことですか?」


挑発的な私の声に、部屋に居る全員の息を飲む音が聞こえた気がした