ちょっとびっくりした。

何なら、天音もびっくりしてる。

な、何をやってんだシルナは?

「が、学院長先生?だ、だいじょう、」

シルナの急変を心配した天音が、声をかけようとすると。

「…えに、行く」

「え?」

「私の生徒、迎えに行く!」

シルナは、天音の鼓膜が破れんばかりに絶叫した。

あまりの気迫と剣幕に、天音が腰を抜かしかけていた。

本当ごめんな?

で、このアホシルナは、何を言ってんの?

「何を言ってんだよお前は?あと天音に謝れ」

「私の生徒を迎えに行くんだよ!シャネオンまで!」

「はぁ!?」

常日頃、ボケたことばかり言ってるシルナだが。

今日はまた、一段とボケてるぞ。

夏バテか?

「羽久が私に、失礼なことを考えてる気がするけども!しかし私の決意は揺るがない。シャネオンまで、生徒を迎えに行くんだ!」

「な、何を言ってるんだよ?シャネオンまで迎えにって…」

行ける訳ないだろ?どれだけ距離離れてると思ってんだ。

それに。

「そもそも、列車が動かない原因すら分かってないんだぞ?行ってどうするんだよ?」

「そんなの、行ってから考える!」

アホの発想。

「じっとしてなんかいられないよ!私の!生徒は!今日!帰ってくるんだから。今日チョコ渡すの!そう決めたんだもん!」

駄々っ子の発想。

「だから迎えに行ってあげるんだ!きっと駅で立ち往生して、困ってるに違いない!生徒が困ってるのを助けるのは、学院長の役目だ!」

無駄に良いことを言ってはいるが、やろうとしていることは、無謀にも程がある。

おまけに。

「勿論、羽久も付き合ってくれるよね!」

「は!?」

シルナは、俺の手を取ってそう言った。

何で俺?

俺関係なくね?

「一緒にシャネオンまで行こう!生徒を迎えに!」

「い、いや。何で俺まで?」

行きたいなら、一人で行けよ。

「よし、そうと決まれば早速行こう!チョコを携えて!いざ出陣!」

話聞けって。何も決まってねぇよまだ。

ちょ、このままじゃ、俺までシルナの暴走に付き合わされてしまう。