神殺しのクロノスタシスⅣ

「…まぁ、そうだよなー。記憶喪失になっても、ナジュ君って私のことだけは覚えたもんなー」

でしょ?

他のことは忘れても、リリスのことだけは忘れない。

「当たり前ですよ。僕は…リリスの為に生きてるんですから」

「…そっか」

いつだって、僕はそうだった。

誰にも愛されなくて、孤独でいたときも。

あの悲惨な戦場を、駆け回っていたときも。

…リリスが、僕の前から姿を消したときも。

僕はリリスの為に生きていた。ずっと。

「…ねぇ、ナジュ君」

「はい?」

「ナジュ君は、私に会ったこと…後悔してる?」

…はい?

「どうしたんですか、いきなり…」

「ううん…。ふと、そう思ったんだ」

…。

「私に出会わなければ…ナジュ君は、こんな苦しみを背負うことはなかったんだよ。分かってるでしょ?」

それは…。

…そうかもしれませんね。

リリスに出会わなければ、僕は過酷な戦場で、一人取り残されずに済んだ。

リリスに出会わなければ、僕は死という自由を許された。

リリスに出会わなければ、僕は不死身の苦しみを味わうことはなかった。

リリスに、出会わなければ…。

「私が、ナジュ君に重たいもの押し付けちゃった…。私が…一人ぼっちになりたくないが為に」

「…」

「ごめんね。辛いよね…。私の我儘のせいで…。本当にごめ、」

「えい」

「いたぁ!?」

リリスのおでこに、デコピンしてみた。

あ、これはDVではないので。あしからず。

「何するのさ、もー!」

「リリスこそ、何言ってるんですか」

昼間、天音さんにあんな話したものだから。

さては、リリスもちょっとナーバスになってるな?

可愛い人だ。

「僕が後悔することはありませんよ。例えあなたに何をされたとしても」

「…ナジュ君…」

「あなたが、そう言ったんじゃないですか」

忘れたとは言わせませんよ。

あのときリリスに言われたことを、今度は僕が…そっくりそのまま返そう。