神殺しのクロノスタシスⅣ

相変わらず、僕を膝枕して、髪を撫でてくれているリリスである。

この瞬間って、何物にも代え難い幸福なひとときだよな。

好きな女の子が、膝枕してくれてるんですよ?

童貞なら鼻血を吹くシチュエーションだな。

それを僕は、当たり前のように満喫してるんですよ。

ふはは。

まぁ、精神世界なんで、現実ではないんですけどね。

僕が楽しんでるので良し。

で、それよりも。

「楽しそう…僕がですか?」

「うん。今日、とっても楽しそうだったよ」

…。

…そうか?

「初めてだもんね。ナジュ君に、あんな親しいお友達が出来るなんて」

声を弾ませるリリスである。

親しいお友達…。それは言うまでもなく…天音さんのことだろう。

確かに、我ながら驚いてるよ。

まさか自分に友達が出来るとは。

僕は昔から、リリスがいればそれで良かったから…友達なんて欲しいとは思わなかった。

それに、故郷では…いくら友達を作ったって、どうせ別々の戦場に送られて…二度と会えないかもしれないのに。

そんな状況では、尚更友達を作る気になどなれない。

失って悲しむくらいなら、最初から一人の方が良い。

リリスを失って、僕が学んだことだ。

それなのに…何故か今は…大切なものが、一つまた一つと増えている。

…これは良くない兆候なのでは?

また、失って悲しむことになりかねない…。

「これまでずっと、ナジュ君…一人ぼっちだったでしょ?私の為に…私以外は要らないって」

「…」

「ナジュ君に大切なものが出来て、毎日楽しそうで…私、嬉しいよ」

…楽しそう…なんですかね?僕。

まぁ、昔みたいに…死にた過ぎて、他のことを考える余裕が全くなかった…あの頃に比べれば。

今は随分、気持ちが楽になってるよな。

少なくとも、人生で初めて友達を作るほどには。

しかし。

「嬉しいけど…。ちょっと嫉妬しちゃうな」

「…嫉妬?」

「うん。ナジュ君が、他の人ばかり大切にして…私のこと忘れちゃうんじゃないかって、心配」

「…ふふ」

僕は思わず笑ってしまった。

「あ、酷い!何で笑うの?」

「済みません。リリスが、あまりに有り得ないこと言うものですから」

「有り得なくないでしょ」

「有り得ないですよ」

確かに僕には、大切なものが増えた。

守るべきものも増えた。それは良いことなのかもしれない。

でも、だからって。

「僕がリリスを忘れるなんて、それは絶対有り得ないです」

「…本当?」

「本当ですよ」

自分の命より遥かに大切なものを。

どうして、一秒たりとも忘れることがあるだろうか。

それだけは絶対に有り得ない。