神殺しのクロノスタシスⅣ

「僕、何か仲間思いエピソード持ってましたっけ?」

「え?凄くたくさんあるじゃない。いつもいつも、あれだけ怒られてるのに、皆の為に盾になるのやめないし」

「あれはほら、僕の唯一の取り柄みたいなものですから」

「唯一の取り柄なんかじゃないよ。生徒達にだって、いつも放課後の自主練、付き合ってあげてるじゃん」

「あれもほら…僕の数少ない取り柄みたいなものですから」

不死身であることと、読心魔法が使えることだけだな。

それ以外に、僕の良いところって言ったら…。

…。

…顔かな?

あとは思いつかない。

「それに、僕達の為に、無茶な読心魔法の特訓してたこともあったでしょ」

「あれは…すぐりさんに読心魔法を看破されたのがムカついたから…」

「嘘。リリスさん言ってたよ。ナジュ君は、皆の信頼を取り戻したくて必死だったんだって」

リリス、あなた言って良いことと悪いことってものがあるでしょう。

「それにこの度の…『サンクチュアリ』の件だって」

「僕、何かしました?」

「学院にスパイが紛れ込んでることに気づいて、学院爆破を阻止したでしょ。無茶しながら」

「…よく覚えてますね、そんなこと…」

忘れて良いんですよ、そんなこと。

世の中、もっと覚えておかないといけない大切なことがあるでしょう。

「介抱したの僕だからね。覚えてるよ」

そうだった。

「それに、異次元世界に行くときだって、自分から立候補してたでしょ」

「…よく覚えてますね、そんなこと…」

忘れて良いんですって。そんなこと。

何でも覚えてたら、逆に疲れるでしょうに。

「帰ってきた後、介抱したの僕だからね」

そうだった。

さすが保険室の先生。隙がなさ過ぎますね。

「異次元世界から帰ってきたとき、凄く傷ついてるみたいだったから…」

「あんなの僕の自業自得なんですから…いちいち気にしなくて良いんですよ」

「でも、あんな辛い思いしてでも、僕達の為に異次元世界に行ってくれたでしょ」

…それは…。

まぁ、そんなこともしましたけど…。

「何だか悪人ぶってるけど、君は自分で思ってるよりずっと良い人だよ」

何だそれは。

そんなあなた…近所の悪戯小僧みたいな…。

「あんな出会い方をしたから、最初は、確かに憎みもしたけど…。それは事情があったからで、君が生来の悪人だからじゃない」

「…」

「皆それが分かってるから、ナジュ君に優しくするんだよ。大丈夫。もっと自分に自信を持って良いんだよ」 

自分に…。

…自信、か…。

全く…これが冗談なら、どんなに気楽なことか。

でも心の中を覗いてみたところ、本ッ当に、この人の本心なんだよなぁ、これが。

僕が良い人なんじゃなくて、あなたがお人好し過ぎるのでは?