神殺しのクロノスタシスⅣ

「頑張ったね、凄く…。辛いのに、頑張ったんだ、ナジュ君は」

何でちょっと泣きそうなんですか。

あなたが泣いたら駄目でしょう。

いや、あなたに限らず…。

「…優し過ぎなんですよ、あなた達は」

僕は、弁護する余地もない大罪人なんだからさ。

もっと皆、僕を責め立ててくれれば良いのに。

あれほどのことをしといて、何悠々自適に教師なんかやってんだ、って。

罪人は罪人らしく、一生牢屋の中で臭い飯食ってろ、って。

そう言ってくれれば良いのに。

それどころか、折角何しても死なない、不死身の身体なんだから。

人体実験に使うなり、危険な労働を押し付けるなり、それこそ煮るなり焼くなり何でも出来るのに。

皆、馬鹿みたいに優しくて。

学院長は勿論、羽久さんは毎回、僕に盾になるな、って怒ってくるし。

何なら殴ってもきたし。

イレースさんだって、僕が爆弾抱えて自爆したら、なんかめっちゃ怒って口を縫ってくるし。

学院の風紀を乱すとか何とか言いながらも、いっぱしの教師として認めてくれるし。

令月さんは…あの人は細かいことを考えるタイプじゃないから、まぁ普通に接してくるんだけど。

すぐりさんなんて、僕の読心魔法稽古に付き合ってくれるし。何だかんだ僕を頼りにしてくるし。

主にツキナさんのことでね。

たまに、深夜に僕の部屋に入ってきて。

「今日ツキナがさ〜!」って相談してくるんですよ、あの人。

頼りにしてくれるのは有り難いんだけど、リリスとのイチャイチャタイムを邪魔するのやめてください。

で、天音さんはこれでしょ?

憎い仇のはずなのに、今や僕の…一番の…。

…一番の…友達ですよ。

いつの間にか、そうなってますよ。

おかしなものだ。

天音さんの心は、いくらなんでも広過ぎる。

広けりゃ良いってものじゃないぞ。

天音さんはもうちょっと…いや、イーニシュフェルト魔導学院の連中は揃って。

もっと、危機感を持つべきだな。

「何で僕みたいな人間を、平気で信用出来るのか…。理解不能ですよ」

そもそも僕、最初にここに来たとき、皆さんを騙して入ってきたんだぞ?

散々迷惑をかけ、その上「うぇーん僕死にたいよー」とか抜かして。

ぶん殴れ、そんな奴は。

それなのに、何で喜んで迎え入れちゃってるんだ。

訳が分からない。

「それは、ナジュ君が良い人だからだよ」

天音さんは、こうやってもっと訳が分からないことを言うし。

大丈夫ですか、頭?

「一応聞いておきますけど、どの辺が良い人なんですか?」

「だって、仲間思いでしょ?」

「…」

うん、よく分かった。

「天音さん…。あなた、残暑に頭でもやられましたか?」

そうだとしたら、とても気の毒ですね。

夏バテに効く食べ物…えーと。

「そうめん…作りましょうか?」

「…何でそうなるの…?」

「季節遅れの夏バテで、頭おかしくなったのかなぁと…」

「なってないよ…。僕、保健室の先生だよ?」

そういえばそうだった。

忘れてましたよ。済みませんね。