神殺しのクロノスタシスⅣ

いっそ責めてくれれば楽なんだけどな。

「お前の過去話なんて、クソほども興味ねぇわ」とか。

「お前の死にたがりのせいで、犠牲になった大勢の人が報われねぇよ」とか。

「自分の不幸に浸って、勝手に気持ち良くなってんじゃねぇぞこの野郎」とか。

「何不幸ぶってんだ、苦しいのはお前だけじゃねーんだぞ」とか。

言いたいことは、いくらでも浮かんでくるだろうに。

いっそそう言ってくれたら、僕も楽なんだけどな。

全部自業自得だし。

何でこの人は、僕を許そう許そうとするのか。

責めろよ。

その権利があるだろ、あなたは。

ドMか?僕は。

「それに…僕には、ナジュ君を責めることは出来ないよ」

挙げ句、こんなことを言い出す始末。

「何でですか」

「多分、立場が同じだったら…きっと僕も…同じことをしてただろうから」

「あなたはしないでしょ。僕より賢いんだから」

例え天音さんが、僕と同じ境遇に陥ったとしても。

僕みたいに破滅的な思考には陥らなかっただろう。

「むしろ天音さんなら…ひたすら落ち込みまくって、日々泣き暮らしてそうです」

うん、想像出来る。

「…それはそれで、情けなくない?」

「人を殺してまで、死ぬ方法を探してた僕よりマシでは?」

「それって、ナジュ君みたいな行動力が僕にはないってことでしょ?やっぱり情けないよ」

物は言いよう、ってね。

「ナジュ君は強いよ、凄く。弱くなんてない」

「…何処が…?」

「だって、罪を犯しながらでも…泣き暮らすことなく生きてるじゃないか」

それはだって…死ねないから。

それに、泣いてたってしょうがないから。

そういえば僕、一人になってから、泣くことってなかったな。

味方が全滅した戦場で、思いっきり泣きじゃくって…それ以来泣いたっけ?

学院長と羽久さんと戦ったときに泣いてたのは覚えてる。

でもその前は…泣かなかったな。

何でだろう。涙は出なかったんだよな。

「それに、自分の罪を認めてるでしょ、ナジュ君は」

「いや…。認めるも認めないも、罪を犯したのは事実なんだから、言い逃れのしようもないじゃないですか」

「そんなことないよ。それだけ苦しい過去を持ってたら、自分の罪を正当化して、自分は悪くないって言う人もいるよ」

あぁ、成程。

まぁ、そういう人もいるかもしれない。

凄い卑怯だな。

「でもナジュ君、絶対、自分は正しいことをしたんだ、とは言わなかったでしょ」

「…そうですね」

正しいことは何もしてないですね。

悪いことばっかりしてきたんだから。

「そういうところが偉い。強いよ。並みの人に出来ることじゃない」

はぁ、そうですか。

僕みたいな救いようのない悪人を、これほど褒め称えることも…並みの人には出来ないでしょうね。

あ、いや皮肉じゃないですよ?