神殺しのクロノスタシスⅣ

「ナジュ君…」

「どうです?…つまらなかったでしょう?」

学校が休みの日曜日。

暇潰しにと、保健室にいる天音さんを訪ねてみたら。

不意に天音さんから、

「ナジュ君の昔の話が聞きたい」との要望を受け。

暇だし、ここいらで自分の人生を振り返ってみるのも良いか…と思って。

ダラダラと、語ってみた次第である。

やっぱりつまんなかったな。

つまんないかなーと思いながら話してみたけど、案の定だった。

まぁ、あれですよ。

僕の人生って、そんなエンターテイメントじゃないんで。

そもそも、聞いてて面白い過去話を持ってる人なんて、そうそういないだろう。

大抵つまんないものですよ。他人の人生なんて。

自分でもつまんないのに、他人が聞いたらもっとつまらないだろう。

しかし。

「そんなことないよ」

天音さんは優しいから、どんなに内心つまんねーなーと思ってても、こう言うんですよね。

試しに心の中を覗いてみると。

…本当に「つまらなくなんてない」と思ってて、かなりびっくりした。

天音さん、あなたの前世は菩薩か何かですか?

前世からして悪行ばかり積んできた僕とは、魂の格が違うな。

あなたは良い人ですよ、全く。

世の中が天音さんみたいな、良い人ばかりで溢れていたらなぁ。

荒んだ僕の心も、少しは慰められただろうに。

「…想像はしてたけど…。大変だったんだね、ナジュ君」

天音さんは、ポツリとそう言った。

ここまでの、長々とした僕の一連の過去話を。

「大変」の二文字で終わらせるとは。

さすがですね。

「そりゃまぁ、大変ではありましたけど…」

自分が大変な状況にあると、気付けないほどには…大変だったな。 

でも。

「大変じゃない人って、います?順風満帆に、誰にもケチつけられない真っ当な人生送ってきた人なんて、まずいないでしょう」

皆何かしら、あるもんだよ。

読心魔法を使える僕が言うんだから、間違いない。

清廉潔白で、善行だけ積んで、一等賞だけを取ってきた、人生の優等生なんていませんよ。

もしいたとして、そいつの人生ほどつまらないものはない。

人生なんてものは、醜ければ醜いほど、価値のあるものなんだよ。

それだけ色んな苦労を経験してきたってことだから。

…あれ?そう思えば、僕の人生も結構価値のあるものなのでは?

いや、僕は何もしてないから。ただの死にたがりだから。

やっぱりつまんないです。

「そうかもしれないけど…ナジュ君、これまで…一人で、凄く頑張ってたんだね」

「…」

「偉いね。頑張って生きて…。偉いと思うよ」

…頑張って生きて…も何も。

死ねないんだから仕方ない。

天音さんが言いたいのは、そういうことじゃないんだろうけど。

それに…。

「あなたは、僕の人生を褒めちゃ駄目でしょう」

「何で?」

「何でって、それは…。僕はあなたの大切なものを奪って…」

忘れたとは言わせませんよ。

僕は自分の身勝手の為に、天音さんの大切なものを奪い、殺したのだ。

その罪は永遠に消えない。

それなのに、天音さんは。

「それとこれとは別の話でしょ」

良いんですか?別の話にしちゃって。

調子狂うなぁ、相変わらず…。