神殺しのクロノスタシスⅣ

言い訳はしないと言いましたよね。

だからこの際、言ってしまいますね。

この時点で、僕が最低のクズだってことは確定してるんだから…これ以上罪を重ねても、怖いことなんて何もない。

今こうして振り返って、己の罪を自覚してみても。

悪いことしたなぁとは思っても、後悔はしてないんです。

多分今あのときに戻ったとしても、僕、同じことするでしょうしね。

今こうして僕が落ち着いて、昔語りなんかしてるのは、学院長や羽久さんと出会ったからです。

出会わなければ、今でも僕は…自分を殺してくれる人を求めて、放浪の旅を続けていただろう。

今僕が積極的に死にたがってないのは、精神世界でリリスと再会出来たから。

現実世界では会えずとも、精神世界でなら…僕の心の中でなら、リリスに会えるから。

勿論、それで満足してる訳じゃないですよ?

心の中で会うのと、現実世界で会うのとじゃ全く違いますからね。

でも、それはもう二度と出来ない。

リリスってこんなに美女なんですよ、って皆さんに見せてあげたくても、出来ないんです。

以前ほどじゃないにしても…まだ辛いですよ。

死にたいという気持ちも、変わってはいない。

今振り返ってみると、昔の僕がどれほど狂ってたか、身に沁みて分かります。

そこを…利用されたんでしょうね。

あの女…ヴァルシーナに。

…ヴァルシーナの話、した方が良いですよね?

一応、僕達がこうやって…出会うきっかけになる事件だった訳だし。

あの女に会ったのは、いつの頃だったか…。

リリスと離れ離れになってから、時間の流れなんて正確には覚えてないんだけど…。

少なくとも、僕が勧誘されたときには既に、ヴァルシーナは『カタストロフィ』という組織を作っていました。

最初は『カタストロフィ』の正規メンバーとして誘われた。

あのシルナ・エインリーを、共に倒そうってね。

しかし僕に、ヴァルシーナのような野望はなかった。

『カタストロフィ』のメンバーのような、心意気も志もなかった。

僕にあったのは、ただ死にたいという欲求だけ。

ただの死にたがりなんですよ。僕は。

僕には夢も希望もない。死ぬこと以外には。

だから『カタストロフィ』の理想なんてどうでも良かった。在るべき世界がどうとか、そんなことはクソどうでも良かった。

好きにしてくれ、って感じで。

そりゃまぁ、僕の望みは死ぬことなんだから?その目的が達成されれば、世界がどうなっていようと、僕は死ぬから関係ない。

自分が死んだ後の世界なんて、ヴァルシーナがどうとでもすれば良い。

『カタストロフィ』の訳分からん能書きはともかく。

シルナ・エインリーの情報は、僕にとって非常に魅力的だった。

何せ彼は、神殺しの魔法とやらを使える。

その魔法を使えば。神をも殺せる力があれば。

僕は、ようやく自分の悲願を叶えることが出来る。

それまでの僕は…あなたも知っての通り。

各地で腕利きの魔導師がいるという情報を集めては、その人に殺してもらおうと出向いていたんですが。

あなたも知っての通り、なかなか上手く行かなかったんです。

お陰でついたのは、『殺戮の堕天使』とかいう中二病満載の二つ名です。

…済みませんね、嫌なこと思い出させて。

ともかくシルナ・エインリーなら…これまでの魔導師とは別格だと思った。

彼なら、きっと僕を殺してくれる。

『カタストロフィ』に協力したのは、そういう理由です。

シルナ・エインリーに敵対すれば、僕は彼に殺してもらえるだろう、と。

でも『カタストロフィ』の思想はどうでも良いから、あくまで『カタストロフィ』には入らず。

彼らに手を貸す、という条件のもと、僕は僕で好きなように動いた。

結果は…まぁ、これも知っての通り。

失敗だったんですよね。

それどころか、今やこうして、シルナ・エインリー学院長の味方になり。その挙げ句に…。







「…天音さん。あなたとも、こうして僕の過去を語る仲になっている」

全く人生という奴は、なんと奇妙なものだろう。