神殺しのクロノスタシスⅣ

…あの後、あの戦場が一体どうなったのか、僕は見ていないんです。

融合してからしばらく、僕は意識を失っていたらしくて。

気がついたら、目が覚めたら…。

そこは、誰もいない、何もない荒れ果てた更地になっていた。

いつの間にか、戦闘は終わっていた。

しばし呆然として、それから自分の姿を見て、今度は唖然としました。

自分は確かに死んだはずなのに、生きている。

はみ出した骨も、内臓も、綺麗に修復している。

おまけに、常に枯渇寸前だった魔力も、たっぷり補填されているんです。

全ては、冥界の女王であるリリスと融合した結果なんですが。

そのとき僕は、まだ気づいていなかった。

いや、本当は気づいてたんです。自分の魂の中に、リリスの気配を感じていた。

これがどういうことなのか、分からない僕じゃなかった。

でも、認めたくなかった。

絶対に認めたくなかった。

リリスが、もう。

この世にいない。僕の身体の中に吸収されて、二度と会うことが出来ないなんて。

それでも、認めない訳にはいかなかった。

だって、リリスが傍にいなかったから。

五歳かそこらのときに契約して、それからずっと、片時も離れず僕の傍にいてくれたリリスが。

何処を見渡しても、何処にもいなかった。

名前を呼んでも。どれだけ呼んでも、リリスは姿を現さない。

誰か見知った顔がいないか、せめて味方の誰かが生き残っていないかと、焼け跡を彷徨うようにして歩いた。

でも、誰の姿も見つけられなかった。

時折、味方のものらしき軍服の切れっ端が目に入って、その度に見なかった振りをした。

よろよろと歩いて歩いて、そして僕は、味方陣地…だったはずの場所に辿り着いた。

そこには、何もなかった。

負傷した魔導師は皆ここに収容されていた。仲間がいるはずだった。

でも、何もなかったんです。

人がいないだけじゃない。味方の…陣地ごと、建物ごと、消え去っていた。

徹底的に爆撃され、破壊されていた。

そのときに気づいたんです。

あぁ、僕達は負けたんだ、と。

僕が落とされ、リリスが落とされ…その結果、屋台骨を失った魔導師陣営は蹂躙され、全滅した。

誰も生き残っていない。

リリスさえも。

生き残ったのは、僕一人だけなんだ。

僕を生かす為に、リリスは犠牲になったんだ。

そう気づいて、僕を支える何物もなくなりました。

その場に崩れ落ちて、僕は一人、喉が焼けるほど慟哭した。

その声に、誰かが気づくことはありませんでした。