神殺しのクロノスタシスⅣ

油断していた訳じゃないんです。

ただもう、身体が限界だった。

あの頃の僕は、今みたいに不死身じゃありませんしね。

普通の肉体を持った、ただの人間でしたし。

こちらは魔法が使えるとはいえ、敵はほぼ全員が特攻を仕掛けてくる。

その状況で、読心魔法なんか使えても大して役に立ちません。

皆突っ込んでくるんだから。心を読むまでもない。

精神面ではまだ何とか耐えていても、身体が限界なんじゃ、どうしようもない。

とうとう僕は激しく被弾して、捨て身で突っ込んできた敵の砲弾に、土手っ腹持っていかれました。

リリスの悲鳴が聞こえたけれど、そのときばかりは、もう強がることさえ出来なかった。

どう見ても致命傷だった。

すぐさま医療魔導師に治してもらえれば、ワンチャン何とかなった…可能性はあるけど。

あの戦場に、まともな医療魔導師なんていなかった。

いたとしても、後方の野戦病院にいただろうし。いずれにしても、最前線にいる僕らには無縁の話だった。

もうこれで終わった。死ぬ。

そう確信があった。自分の命はここで終わりだってね。

段々と意識が薄れていって、痛みも感じなかった。

ただ、リリスが泣きながら、自分に縋っているのは見えました。

彼女は敵を迎撃することもなく、自分に砲弾が当たっても気にせず。

ただ必死に、僕に縋ってました。

「死なないで」って。「私を置いていかないで」って。

好きな女の子を泣かせた挙げ句、置き去りにするなんて最低ですよ。

それは分かっていたけど…でも、どうすることも出来なかった。

横っ腹から内臓はみ出してるのが見えてるんだから、そりゃどうしようもないですよ。

ただ、リリスを泣かせたくないなぁ、とは思ってました。

人生で最期に見るのが、好きな女の子の泣き顔だなんて。

誰だってそんなの嫌ですよね。

だから僕はあのとき、思った。

どうなっても良い。僕はどうなっても良いから。

お願いだから、リリスを泣かせないでくれ、ってね。

でも駄目だった。

僕があのとき最期に見たのは、涙を流すリリスの顔だった。

「嫌だよ、嫌だよナジュ君…!私を…こんな世界で…一人ぼっちにしないで。私を…置いていかないで」

そう言って。

リリスはあのとき、死に行く僕に「禁じ手」を使った。

そう。

リリスは僕を死なせたくないが為、一人ぼっちになりたくないが為に…僕と融合することで、僕の死を止めた。

同時に。

その瞬間を持って…僕は現在の…不老不死、不死身の身体を手に入れた。