神殺しのクロノスタシスⅣ

…なんか、凄く湿っぽい空気になってますね?

あの戦争の中で経験した、悲惨なエピソードは、まだまだ腐るほどあるんですが…。

何だかキリがないので、次の段階に行きましょうか。

えーと、何処まで話したっけ…。

あぁそうだ。僕が、馬鹿みたいな夢を見ていたことを話してたんですね。

いつか戦争が終わる日が来る、なんて夢を。

確かに、終わる日は来ましたよ。

僕の人生が終わる日がね。

その頃僕のいた戦線で、非魔導師陣営は、膠着状態にあった戦局を覆す為に、遂に本腰を入れる気になったんです。

他の地方の戦線で、魔導師陣営がいくつか勝ち星をあげたそうで。

何としてもここだけは取らなくては、と焦ったんでしょうね。

それにその頃には、敵さんもとっくに気づいていた。

何に、って?

この戦線の屋台骨を支えているのが、僕とリリスだけだ、ってことにですよ。

つまり、戦線の中心にいる僕とリリスを潰せば、魔導師陣営は一網打尽に出来るんです。

そのせいで、僕達はいつからか、敵に囲まれるようになっていった。

敵は物量に物を言わせて、僕とリリスを取り囲み、数の暴力で抑え込もうとした。

当然僕もリリスも抵抗するけれど、蹴散らしても蹴散らしても、人間がもう、羽虫のごとく湧いて出てくる。

非魔導師陣営は知ってるんです。

魔導師の魔力は、無限じゃないってね。

さすがに、リリスが不死身だってことまでは知らなかったと思うけど。

しかし、リリスが魔物であることは知っていた。

そして魔物の力の源が、契約者にあることも。

だったら簡単なことだ。

厄介なリリスではなく、力の供給源である僕の命を奪えば、それでリリスを止めることが出来る。

敵がそう気づいてからの猛攻は、それは凄まじいものだった。

この戦線において、魔導師陣営の主軸を僕とリリスが担っていたのは、言うまでもない。

よって僕達が落とされれば、必然的に魔導師陣営は瓦解する。

敵はそれを知っているから、死に物狂いで僕達を落とそうとしてくる。

彼らお得意の、捨て身の特攻で、だ。

一方こちら、魔導師陣営もまた、余裕など欠片もなかった。

敵は僕とリリスを狙っている。僕とリリスが落とされれば、魔導師陣営も終わる。

自分達が殺されない為、魔導師陣営を守る為に、こちらもまた捨て身になる。

僕達を守る為に、一体何人が犠牲になったことか。

彼らはせめて、僕とリリスだけは生かそうと、犠牲になってくれたのだ。

仲間に情が通っていただけに、身が千切れるような思いがした。

あ、僕でも一応、情が通ったりするんですよ。一応ね。

あのときはまだ少年だったし。

こうして出来上がったのが、互いに捨て身特攻を繰り返すばかりの、地獄の戦場。

これまでだって相当酷かったけど、これまで以上だった。

僕もリリスも、もう悲しんでいる暇も、それどころか僅かな休息すらない。

敵の増援は、蹴散らしても蹴散らしても、わらわら湧いてくる。

僕達を取り囲む攻撃は、いつまで経ってもやむことがない。

僕らは永遠に敵の砲弾に狙われ続けるんじゃないかと、本気で思ったものですよ。

でも、実際にそうだったんです。

僕らは死ぬまで攻撃され続けました。

もう何度目か分からない絨毯爆撃で、ついに、とうとう。

僕が、先に落とされました。