神殺しのクロノスタシスⅣ

こう聞くと、あの戦争では、良いことなんて何もなかった、辛いことしかなかったと思うかもしれませんね。

確かに、良いことなんてなかったんですけど。

でも、辛いことしかなかったのかと聞かれたら、案外…そうでもなかったんですよ。

少なくとも僕は、あの頃一人ではなかった。

あの後、何百年と孤独に苦しむことになるんですが。

でもあのときは、一人じゃなかった。

リリスがいた。リリスだけじゃなくて、戦場には戦友がいた。
 
戦友の魔導師は全員年上で、階級も僕より上だった。

それでも戦友達は、皆僕に優しかった。僕とリリスに。

この戦線の屋台骨を支えているのが、僕達だったからだろう。

僕とリリスのことを尊敬して、凄く頼りにしてました。

あんまり頼られるのは困るけど、でも感謝されるのは悪い気分じゃなかった。

まだ若いのに、子供なのに、本当によくやってくれていると、しょっちゅう褒めてくれましたよ。

そして、少しでも僕達の負担を減らそうと、彼らも必死に戦ってくれた。

上から何か配給があれば、真っ先に僕達に回してくれた。

「この戦争が終わったら、君達に勲章を授与するよう皆で推薦する」と、口を揃えて言ってくれた。

勲章なんてどうでも良かったし、戦争が終わる日なんて永遠に来るとは思えなかった。

それでも、その気持ちが嬉しかった。

あの戦場にいる戦友のほぼ全員が…一度ならず、二度三度と、僕とリリスに命を救われていた。

僕達がいなかったら、多分皆死んでいた。

そのせいもあってか、戦友の誰もが、僕達を英雄視していたのだ。

僕とリリスは、長きに渡るあの戦争の中で、多分最も戦果を上げた魔導師だと思う。
 
誇張ではなく、本当に。

あの絶望的な毎日の中で、僕達は希望だった。

だから仲間達は、皆僕とリリスを頼りにしていた。大事にしていた。

人間は、希望がなければ生きていけない。

僕とリリスもまた、そうだった。

あの状況においてもまだ、希望を捨ててはいなかった。

いつかこの戦争は終わる。それがいつかは分からないけど。

どちらが勝っても良い。僕達が負けるなら、それでも構わない。

とにかく、毎日誰かを殺さなければ生きていけない、この日々が終わってほしい。

いつかきっとそんな日が来る。

淡い希望。馬鹿みたいな妄想。

よくもまぁあの絶望的な状況で、そんな希望が持てたものだと、今になって思うけれど。

あのときは、そんな希望にでも縋らなきゃ生きていけなかったんですよ。