神殺しのクロノスタシスⅣ

連日、毎日、リリスは血にまみれて戦っていた。

それは僕も同じだったけど、リリスの戦いは、僕のそれとは比べ物にならなかった。

リリスがほぼ一人で、敵の部隊を相手にしているのだから、無理もない。

だけど本来リリスは、好戦的な性格ではない。

戦うことが苦手、とまでは言わずとも…得意な方じゃなかったはずだ。

それなのに、僕は彼女を、戦いに巻き込んでしまった。

僕と契約したばかりに。

僕と契約しなければ、リリスは戦わずに済んだのに。

リリスを、望まない戦いに巻き込むことはなかったのに。

リリスが今こんな目に遭っているのは、全部僕のせいだ。

本気でそう思っていた。

事実なんですけどね。

「僕と契約しなければ…リリスは、こんな戦争に巻き込まれることもなく…」

「それ以上言っちゃ駄目」

リリスはそう言って、僕の口を塞いだ。

珍しく、とても険しい顔だった。

ちょっと怒っている風にも見えた。

怒ってる顔も可愛いなーなんて、頭の隅っこで考えていた。

「ナジュ君に出会えてなかったら…私はずっと一人ぼっちだった。今も…誰とも心を通わせることも出来ずに、孤独に彷徨ってた」

「…」

「ナジュ君に出会えたから、私は自分の人生に価値を見出だせたんだよ。君に会って、君と共に生きて…初めて、生まれてきて良かったって思えたんだ」

そう。

リリスも、僕と同じだったんです。

お互いに会うまで、世界はモノクロで、何の価値もない人生だった。

お互いと出会って初めて…生きる意味というものを知った。

自分の人生が、価値のあるものだと思えた。

「だから、君の為に戦うことは、全然辛くないよ。これから先、どんなことが起こったって…君と出会ったことを、後悔したりなんかしない。私は、ナジュ君に出会えて幸せなんだよ」

「リリス…」

「契約しなければ良かったなんて、もう二度と言わないで」

「…はい」

僕は、リリスの両手を握った。

「僕も…あなたと出会えて幸せですよ」

そう言うと、リリスは本当に…本当に、嬉しそうに微笑んでくれた。

えぇ。今も、この気持ちは変わっていません。

例えリリスのせいで…僕が何を背負わせたとしても。

それでも僕は、あのときのリリスと同じことを言います。

あなたに会えて良かった。出会えたことに、後悔なんてしない、と。