神殺しのクロノスタシスⅣ

こうして僕は、全世界の男の夢である、恋人の膝枕で眠るという贅沢を、毎回堪能していたのだ。

まぁ、そんな状況を素直に楽しめるほど、気持ちに余裕はなかったので。

リリスに膝枕してもらいながらも、僕は割と上の空だったんだけど。

今思えば、勿体ないことをしましたよ。

いくら疲れているとはいえ、膝枕は別だろうと。

昔から、リリスの膝枕、好きでしたからね僕。

何なら小坊の頃から、リリスの膝枕大好きでした。

いや、冗談言ってるんじゃないですよ。本当のことです。

あの後、僕達の身に起こることを思えば…。

ちゃんとあのとき、膝枕を堪能しておくべきだったんです。僕は。

とは言っても、眠ることはあんまり出来ませんでした。

休める時間は、長くても四、五時間程度だったし。

あまりにも疲れ過ぎていたのと、戦場でずっと気が立っていたせいで、いざ眠れと言われても、なかなか眠れなくて。

だから、ずっと目を閉じていた。

目を閉じて、眠っている振りをしていた。

リリスもそれが分かってたのか、僕が目を閉じている間、ずっと僕の髪を撫でてくれてましたよ。

血と泥にまみれた髪を。

その間僕はずっと、子守唄代わりのリリスの声を聞いていた。

「大丈夫だよ、ナジュ君。大丈夫…。君のことは、私が守ってあげる。絶対に…君だけは…私が守るからね。大丈夫…」

それは、僕に言い聞かせていると言うよりは。

リリス自身が、自分に暗示をかけているように聞こえた。

こんな状況でも。どれだけ状況が悪くなっても。

僕達の関係は、何も変わらないままだった。

永遠の絆で結ばれた仲、って奴なのかもしれません。

今でも覚えているけど。

何度か、こんなことがあった。

リリスの膝枕で寝るんじゃなくて、リリスが僕の隣に横になって、一緒に眠ったことが。

リリスは、「私は大丈夫」を連呼していたのだが。

とても大丈夫そうには見えなかったから、「リリスも休んだ方が良い」と、僕が強く言ったのだ。

そういうときは、並んで横になった。粗末なベッドで。
 
ロマンチックな何かが起こるはずもなく、ただ寝転がっていただけなんだけど。

あのとき交わした言葉は…今振り返って口にすると、結構恥ずかしい。

でも、お互い大真面目だった。

一度、こんなことを言ったことがある。

「…リリスは、僕と契約したことを後悔してるでしょうね」

「え?」

疲れ果て、消耗しきって、死体のように寝そべっていた僕は、不意にそう口走っていた。

我ながら、かなり疲れていたんだと思う。