「兵隊には食糧が配られるって言ってたから、ナジュ君もらってくると良いよ」
滅多にあったことじゃない、と記憶しているけど。
あの戦場でも、一応、食糧の配給はあった。
魔導師故に、食事をする必要はそれほどなかったのだが。
僕達は度重なる連戦で、常に酷く疲弊している状態だったから。
エネルギーを摂取出来るなら、そうした方が良い。
リリスは僕が魔力を消費していることを心配して、そう言ってくれていたのだ。いつも。
でも。
「いえ…。結構です」
僕は、ほぼ毎回そう言って断ってた記憶がある。
さっきまで、人間の肉片と血をしこたま見せられていたのに。
どんな食糧でも、口に入れる気分ではなかった。
どれほど疲れていても。
おまけに、この血みどろの戦場で配給される食糧が、上質な物であるはずがなく。
そもそも魔導師陣営は、食糧生産にはほぼ全く人力を割いていなかったから。
配られる食糧は、それはもう、食べられたものじゃなかった。
何が入ってるのか、食べてみてもよく分からない、ゴムみたいな味のする缶詰とか。
歯が折れそうなくらい固くて、しかも全く味のない、パサパサに乾いたビスケットとか。
学院長だったら、絶対に食べられないでしょうね。
僕だって、そんなものを食べるくらいなら、何も食べない方がマシだった。
…でも。
「駄目だよ。ちゃんと食べた方が良い」
リリスが毎回、僕を諭すようにそう言うから。
仕方なく、僕はリリスを喜ばせたい一心で。
その不味くて訳分からん食べ物を、味を感じないように食べていた。
凄い不味かったのは覚えている。
あのときなら何とか食べられたけど、今同じものを出されたら、絶対喉を通らないだろうな。
こういうのも全部、僕とリリスの毎度お決まりのやり取りで。
最終的には食べることになるんだから、最初から諦めて食えよ、って今となっては思うけど。
あの頃は全然気づいてなかった。そんな心の余裕がなくて。
それに、リリスは正しかった。
こんな血まみれの戦場において、食糧が配給されるのは、あれで割と幸福なことだったのだ。
まだ上層部は、僕達のことを忘れてないって証だったし。
それに、陣地にいる全員に配給出来るほど食糧は多くなかった。
そんな中、僕とリリスがこの戦場の主戦力だと、皆分かっていたから。
せめてもの食糧を、僕に回してくれていたのだ。
あとはまぁ、僕に倒れられたらリリスが戦えなくなってしまうから。戦力維持の為にも、僕は元気でいてもらわなければならなかったのだ。
そういう事情もある。
で、不味い食事が終わったら、次のお決まり。
「今のうちに休んでおこう。ほら」
配給の、薄汚れた毛布をポンポン、と叩いて。
リリスは、僕に眠るように促した。
これは大変魅力的な誘いだった。
性的な意味じゃなくてさ。僕はその頃、起きてるときはいつも酷い疲労感を感じていたから。
疲れていた。めちゃくちゃ。
戦場にいるときは頭がハイになっているし、気も立っているから、あまり感じないのだけど。
こうして、ちょっと安全な後方に戻ってくると、どっと疲労が襲ってくるのだ。
食べる気がしないのは、この酷い疲労のせいでもある。
そしてこのとき、僕はいつも同じ言葉を返す。
「…リリスも休んだ方が良いですよ」
不死身の魔物と言えど、魔力を消費していることに変わりはないのだから。
でもリリスは、僕が休むよう勧めると、必ずこう言う。
「私は大丈夫だから。ナジュ君はちゃんと休んで」
そして、必ずと言って良いほど、こう付け加えるのだ。
「ほら、膝枕してあげるから」
こんな魅力的な誘いを受けて、「いや寝ません」なんて言える男がいるなら、会ってみたい。
滅多にあったことじゃない、と記憶しているけど。
あの戦場でも、一応、食糧の配給はあった。
魔導師故に、食事をする必要はそれほどなかったのだが。
僕達は度重なる連戦で、常に酷く疲弊している状態だったから。
エネルギーを摂取出来るなら、そうした方が良い。
リリスは僕が魔力を消費していることを心配して、そう言ってくれていたのだ。いつも。
でも。
「いえ…。結構です」
僕は、ほぼ毎回そう言って断ってた記憶がある。
さっきまで、人間の肉片と血をしこたま見せられていたのに。
どんな食糧でも、口に入れる気分ではなかった。
どれほど疲れていても。
おまけに、この血みどろの戦場で配給される食糧が、上質な物であるはずがなく。
そもそも魔導師陣営は、食糧生産にはほぼ全く人力を割いていなかったから。
配られる食糧は、それはもう、食べられたものじゃなかった。
何が入ってるのか、食べてみてもよく分からない、ゴムみたいな味のする缶詰とか。
歯が折れそうなくらい固くて、しかも全く味のない、パサパサに乾いたビスケットとか。
学院長だったら、絶対に食べられないでしょうね。
僕だって、そんなものを食べるくらいなら、何も食べない方がマシだった。
…でも。
「駄目だよ。ちゃんと食べた方が良い」
リリスが毎回、僕を諭すようにそう言うから。
仕方なく、僕はリリスを喜ばせたい一心で。
その不味くて訳分からん食べ物を、味を感じないように食べていた。
凄い不味かったのは覚えている。
あのときなら何とか食べられたけど、今同じものを出されたら、絶対喉を通らないだろうな。
こういうのも全部、僕とリリスの毎度お決まりのやり取りで。
最終的には食べることになるんだから、最初から諦めて食えよ、って今となっては思うけど。
あの頃は全然気づいてなかった。そんな心の余裕がなくて。
それに、リリスは正しかった。
こんな血まみれの戦場において、食糧が配給されるのは、あれで割と幸福なことだったのだ。
まだ上層部は、僕達のことを忘れてないって証だったし。
それに、陣地にいる全員に配給出来るほど食糧は多くなかった。
そんな中、僕とリリスがこの戦場の主戦力だと、皆分かっていたから。
せめてもの食糧を、僕に回してくれていたのだ。
あとはまぁ、僕に倒れられたらリリスが戦えなくなってしまうから。戦力維持の為にも、僕は元気でいてもらわなければならなかったのだ。
そういう事情もある。
で、不味い食事が終わったら、次のお決まり。
「今のうちに休んでおこう。ほら」
配給の、薄汚れた毛布をポンポン、と叩いて。
リリスは、僕に眠るように促した。
これは大変魅力的な誘いだった。
性的な意味じゃなくてさ。僕はその頃、起きてるときはいつも酷い疲労感を感じていたから。
疲れていた。めちゃくちゃ。
戦場にいるときは頭がハイになっているし、気も立っているから、あまり感じないのだけど。
こうして、ちょっと安全な後方に戻ってくると、どっと疲労が襲ってくるのだ。
食べる気がしないのは、この酷い疲労のせいでもある。
そしてこのとき、僕はいつも同じ言葉を返す。
「…リリスも休んだ方が良いですよ」
不死身の魔物と言えど、魔力を消費していることに変わりはないのだから。
でもリリスは、僕が休むよう勧めると、必ずこう言う。
「私は大丈夫だから。ナジュ君はちゃんと休んで」
そして、必ずと言って良いほど、こう付け加えるのだ。
「ほら、膝枕してあげるから」
こんな魅力的な誘いを受けて、「いや寝ません」なんて言える男がいるなら、会ってみたい。


