…あの戦場に送られてから、どれくらい時が流れただろう?
僕があの場所にいた時間を、僕は覚えていないのだ。
記憶にない。
一ヶ月だったのか、半年だったのか、一年だったのか。
あるいは、本当は十日ほどしかたっていないのかもしれない。
時間の流れが分からなくなるほど、毎日、毎時間、やることは同じだった。
朝も昼も夜も戦場に突っ立って、わらわらと詰め寄せてくる敵を殺すだけ。
爆弾が炸裂する音に怯えるどころか、単なる日常のBGMに変わり。
工場の流れ作業のように、次々襲ってくる敵をひたすら殺す。
そこに感情はない。
本当に、工場で部品を捌いてるみたいだった。
おぞましいでしょう?あなたは特に、こういう話は聞きたくないでしょうね。
だけどあの場所だと、それが普通の感覚だったんです。
…いや、僕がおかしかったんですかね?
心を壊さなければ、正気でいられなかったのかもしれない。
戦争って、まともな神経で出来ることじゃないので。
ただただ、目の前にいるのが自分と同じ人間だということは考えず。
駒を蹴散らすように、ひたすら殺して回ってました。
今思えば、僕はあの頃から、人殺しに何の抵抗も覚えなくなっていたのかもしれませんね。
人を殺すことは悪だなんて価値観は、あの場所では何の意味もありませんでしたから。
毎日血にまみれ、泥にまみれ、汗にまみれ。
ひたすら殺し、殺し、殺し尽くす日々。
あのとき何を考えていたのか、何も考えてなかったのか…。心が麻痺してよく覚えてないんですが。
でも、あんな日々の中でも。
リリスと過ごした時間、リリスと交わした言葉はよく覚えているんです。
人を殺したことは覚えてないのに、好きな女の子と喋ったことは覚えてるなんて。
我ながら、気が狂ってるとしか思えませんね。
「…大丈夫?ナジュ君」
非魔導師陣営の定期便を、何とか蹴散らして。
猛攻を凌ぎ、敵が撤退した僅かな時間。
束の間の休息を与えられた僕に、リリスはいつも必ずこう聞いてきた。
大丈夫?って。
どう考えても、あなたの方が疲れてるでしょうに。
倒した敵の数が違う。
殺した人間の数が違う。
僕はリリスの周りをうろちょろしながら、小蝿を散らしていたに過ぎない。
気遣うべきはリリスの方だ。
「僕は大丈夫ですよ。それより、リリスは?」
だから、リリスの問いかけに毎回、僕はこう返していた。
お決まりの定型句みたいなものだった。
そして、僕が問いかけると、リリスは毎回必ず。
「私は大丈夫だよ」
そう返してきた。
一連の会話が、流れになっていた。
あの戦場で、僕達はこのやり取りを、飽きるほど繰り返してきたけど。
不思議なことに「毎回同じやり取りしてるな」とは気づかなかった。
それだけ、毎日逼迫した状況だった。
僕があの場所にいた時間を、僕は覚えていないのだ。
記憶にない。
一ヶ月だったのか、半年だったのか、一年だったのか。
あるいは、本当は十日ほどしかたっていないのかもしれない。
時間の流れが分からなくなるほど、毎日、毎時間、やることは同じだった。
朝も昼も夜も戦場に突っ立って、わらわらと詰め寄せてくる敵を殺すだけ。
爆弾が炸裂する音に怯えるどころか、単なる日常のBGMに変わり。
工場の流れ作業のように、次々襲ってくる敵をひたすら殺す。
そこに感情はない。
本当に、工場で部品を捌いてるみたいだった。
おぞましいでしょう?あなたは特に、こういう話は聞きたくないでしょうね。
だけどあの場所だと、それが普通の感覚だったんです。
…いや、僕がおかしかったんですかね?
心を壊さなければ、正気でいられなかったのかもしれない。
戦争って、まともな神経で出来ることじゃないので。
ただただ、目の前にいるのが自分と同じ人間だということは考えず。
駒を蹴散らすように、ひたすら殺して回ってました。
今思えば、僕はあの頃から、人殺しに何の抵抗も覚えなくなっていたのかもしれませんね。
人を殺すことは悪だなんて価値観は、あの場所では何の意味もありませんでしたから。
毎日血にまみれ、泥にまみれ、汗にまみれ。
ひたすら殺し、殺し、殺し尽くす日々。
あのとき何を考えていたのか、何も考えてなかったのか…。心が麻痺してよく覚えてないんですが。
でも、あんな日々の中でも。
リリスと過ごした時間、リリスと交わした言葉はよく覚えているんです。
人を殺したことは覚えてないのに、好きな女の子と喋ったことは覚えてるなんて。
我ながら、気が狂ってるとしか思えませんね。
「…大丈夫?ナジュ君」
非魔導師陣営の定期便を、何とか蹴散らして。
猛攻を凌ぎ、敵が撤退した僅かな時間。
束の間の休息を与えられた僕に、リリスはいつも必ずこう聞いてきた。
大丈夫?って。
どう考えても、あなたの方が疲れてるでしょうに。
倒した敵の数が違う。
殺した人間の数が違う。
僕はリリスの周りをうろちょろしながら、小蝿を散らしていたに過ぎない。
気遣うべきはリリスの方だ。
「僕は大丈夫ですよ。それより、リリスは?」
だから、リリスの問いかけに毎回、僕はこう返していた。
お決まりの定型句みたいなものだった。
そして、僕が問いかけると、リリスは毎回必ず。
「私は大丈夫だよ」
そう返してきた。
一連の会話が、流れになっていた。
あの戦場で、僕達はこのやり取りを、飽きるほど繰り返してきたけど。
不思議なことに「毎回同じやり取りしてるな」とは気づかなかった。
それだけ、毎日逼迫した状況だった。


