神殺しのクロノスタシスⅣ

腰が抜けると言うか、身体の力が抜けた。

もう逃げられない。

僕も勿論だが、リリスが。

リリスは一人で、この戦場を任されてしまったのだ。

僕はすぐさま、その上官に、上の人に掛け合ってくれるよう頼んだ。

魔物はそんなに万能じゃない。一人だけで抑えるには限界がある。

すぐに、引き上げた部隊をここに戻してくれ、と。

僕があまりに鬼気迫る顔で言うものだから、上官はたじろぎながら頷いたが。

国境沿いの戦線は、何処も逼迫した状況なのだ。

一度引き下げた部隊を、再びもとの場所に戻す…そんな余裕があるはずがなかった。

第一上層部は「この戦線はリリスという魔物一人で充分」だと、勝手に納得しているのだ。

現場の末端兵士が何と抗議しようが、一笑に付される…どころか。

耳に入れてももらえなかったのだろう。

結局、僕があの戦場を後にするまで、増援が来ることはなかった。

かくして僕とリリスは、僅かな手負いの魔導師部隊と共に、熾烈極まる戦場に取り残されることとなった。

そこから、僕達の地獄の日々が始まった。