神殺しのクロノスタシスⅣ

嫌でしたよ。凄く。全然気は進みませんでした。

徴兵されたときも、気分は良くなかったけど…あのときの比じゃないくらい、嫌だった。

リリスは不死身なんだから、何があっても死なない。

だから、リリスが殺されるかもしれない、ってことが嫌だったんじゃなくて。

かといって、僕自身が殺されることが嫌だったんじゃなくて。

リリスを戦争の道具に使う…その行為が嫌だった。

リリスは戦争の道具じゃない。便利な駒なんかじゃない。

リリスを戦争に巻き込むのは嫌だった。人間達の争いに、魔物であるリリスは関係ないから。

僕はそう言って、反対しましたよ。

何を言われても、どんな命令でも、それまでは淡々と受けて入れてきましたけど。

でもリリスを戦争の道具にするのは、どうにも気が進まなかった。

ぶっちゃけ、めちゃくちゃ嫌だった。

だから反対したんです。上の人に意見しました。リリスを巻き込むのはやめてくれ、ってね。

いやぁ、勇気ある行動ですよね。

あの徹底した軍国主義の中、上官に逆らったんだから。
 
で、どんな返事が返ってきたと思います?

鉄拳制裁でしたよ。

まぁ、当たり前だけど。

僕は軍属の魔導師であり、軍隊にいる限り、上からの命令には必ず従わなければならない。その義務がある。

ましてや、「戦いたくないです」なんて駄々を捏ねる兵士など、言語道断。

リリスが止めに入ってくれなかったら、あと十発は殴られてたと思う。

そう、止めに入ってくれたんですよね、リリスが。

あのときリリスが言ったこと、僕はまだ覚えている。

「私が戦えば良いんでしょう?だったら戦うわ。戦うから、ナジュ君を傷つけるのはやめて」

ってね。

全く、男としてこんなに情けないことがありますかね?

好きな女の子に庇ってもらって。戦わせてしまって。

これでリリスも、もう逃げられなくなった。

自分から戦うと言ったのだから。僕の代わりに戦うとね。

リリスが逃げれば、僕の身が危うくなってしまう。

だからリリスは、僕を守る為にも、絶対に戦場から逃げられなくなってしまった。

本当に…酷い話ですよ。

あのときほど、戦争というものを憎んだことはなかった。

やけっぱちになって、もうどちらの陣営が勝っても負けても構わないから、早く終わってくれと思った。

まぁ、終わるどころか、どんどん深い泥沼に嵌っていくばっかりだったんだけど。

とにかく、リリスに申し訳なくて堪らなかったですね。