神殺しのクロノスタシスⅣ

要するに、学徒出陣ですね。

最初、魔導師陣営の軍隊は志願制だった。

しかし、次第に志願制から、20歳以上は強制的に徴兵されるようになって。

それからしばらくして、成人年齢が引き下げられ、19歳から徴兵されるようになって。

更にしばらくして18歳以上、17歳以上、16歳以上…と、段々徴兵される年齢が下がっていって。

挙げ句、15歳以下でも特に優れた才能を持つ魔導師なら、特別徴兵として赤紙が来るようになった。

僕のその枠でした。

何と言っても僕は、冥界1の魔物と契約している召喚魔導師ですからね。

僕の意志とは関係なしに、軍はリリスの力を求めて僕を徴兵した。

とはいえ。

あの後、すぐまた成人年齢が引き下げられて。

僕があの世界を後にした頃には、13歳以上の魔導師は、全員戦争に駆り出されていたから。

遅かれ早かれ、徴兵されていたとは思うけど。

こうして僕は、イーニシュフェルト魔導学院の生徒が、呑気に学校でお勉強しているのと同じ年齢の頃。

銃弾と爆薬の飛び交う、血生臭い戦場のど真ん中に放り込まれた訳です。

…あ、別に嫌味のつもりはないんですけとね。

平和に学生生活を送れるなら、それが一番なんだから。

しかし、今改めて振り返ってみると。

物心ついた頃から、世の中は魔導師と非魔導師でギスギスしてるのが当たり前で。

年端も行かない頃から、祖国を追い出されて、血みどろで泥沼の戦争に巻き込まれて。

そんな劣悪な環境だったから、僕は後に、平気で人を殺せる殺人鬼になったんでしょうかね。

言い訳ですかね?やっぱり。

育った環境なんて関係なくて、あれは単に、僕の本質がそうだっただけなのかも。

まぁ、ともあれ僕は、まだ少年のときから命を奪い合いに参加させられたんですよ。

…辛くなかったか?

あなたという人は…こんなときでも、優しいことを聞くんですね。

辛くはなかったですよ。

やっぱり僕はおかしいんですかね?戦争に参加させられて、辛くなかったと思うなんて。

でも、本当に…辛いとは思ってなかった。あのときは。

だって、遅かれ早かれ戦争に連れて行かれるのは、分かり切っていたことだったし。

あれだけ軍国主義的な教育をされて、自分だけ逃げたいとか、戦いたくないとか、そういう風には思えなかった。

そんなご時世、そんな世の中、それが常識だったから。

ただ、自分が戦争に巻き込まれるのは良いとして。

リリスを戦わせるのは、気が進みませんでした。

それは確かです。

おかしな話ですよね。自分は戦っても良いのに、リリスは巻き込みたくないなんて。

でもほら…男の子ですから、僕。

好きな女の子は、血生臭いことに巻き込みたくなかった。

リリスの方が、僕よりずっと長生きで、血生臭いことも残酷なこともたくさん知っていたのに。

それでもリリスを戦わせるのは、嫌だった。

…と、言うか。

リリスに守ってもらうのが忍びなかった。

男の子なら、女の子に守られるより、むしろ女の子を守りたいっていう…この気持ち、分かりません?

と、まぁ冗談は抜きにして。

いくらリリスが強いと言っても…僕は、リリスを戦わせたくなかった。

でも、ご時世が…それを許してくれなかったんです。