神殺しのクロノスタシスⅣ

あの戦争の中に、「講話」の二文字は存在しなかった。

どちらかの陣営に平和主義者がいれば、話は違っていたのかもしれないが。

少なくとも僕がいた頃、あの世界では両陣営共に、お互いを深く憎み合っていた。

魔導師は自分達こそ新人類で、旧人類である非魔導師は、自分達より劣っている存在だと自惚れていたのだから。

当然、非魔導師と対等のテーブルについて交渉、なんて有り得ないことだった。

誰が、猿やオランウータンと同じ席について話をするか、ってね。

一方の非魔導師も、魔導師なんか人間じゃない、怪物の類だと思っているから。

怪獣や恐竜と交渉なんて出来ない、との姿勢を崩さない。

お互い人間なんですけどね。そんな簡単なことさえ気づかなかったんでしょうね。

顔を見れば、大して自分と違いないってことくらい、分かるはずなんですけど。

あなたはこんな話、嫌いですよね。不快でしょう?やめましょうか?

…あぁ、そうですか。分かりました。

じゃあ、まぁ続けましょうか。

こうして、戦争が長引けば長引くほど、お互い因縁も増えて、憎しみも増えて、許せなくなっていって。

どちらかが全滅するまでは終わらない、酷い戦争が続いていた訳だが。

段々と悪化していく戦局に、魔導師の国は焦りを見せ始めた。

とは言っても、それは魔導師陣営が負けそうになっていたのではない。

消耗し、疲弊しているのは、両陣営共に同じだった。

その時点で、お互い争うのをやめれば良かったものを。

コンコルド効果と言うか、ここまで戦争の沼に足を突っ込んでしまった以上、引っ込みがつかなくなったと言うか。

お互いに「この戦争はどちらかが滅ぶまで終わらない」と宣言しているものだから、今更やめますとは言い出せない。

そんなことを言ったら、負けたことになってしまう。

だからお互い、向こうの陣営が降参してくれれば良いのに、と思いつつ。

残り少なくなった自軍の戦力を、じわじわと消費し続けていたのだ。

そんな折だった。

当時まだ学生だった僕に、軍からの徴兵命令が届いたのは。