神殺しのクロノスタシスⅣ

これは完全に奇襲作戦のようなもので、魔導師陣営は宣戦布告もせず、一方的に殴りかかった。

卑怯の極みだけれど、でも魔導師陣営に言わせれば。

これまで自分達は、魔導師であるというだけで、自分の生まれ故郷から追い出され、排斥されてきたのだから。

それを同じことを非魔導師に行って、何が悪いんだ、という主張。

あっという間に、そこに住んでいた人々を追い出し、あるいは殺戮し…。魔導師達は、願ってやまない自分達の土地を入手。

はいおめでとう。めでたしめでたし…。

…と、行くはずがないのはお分かりでしょう。

故郷を追い出され、侵略者たる魔導師に土地を奪われた非魔導師は、行く宛をなくして難民状態に陥った。

家族や友人はバラバラになり、今夜夜を明かす家もなく、それどころか食べるものさえない。

そのせいで、また大勢人が死んだ。

当然彼らの憎しみの矛先は、魔導師に向いた。

やり口は強盗みたいなものですからね。突然押し入って、突然奪い取って、突然居直って。

今日からこの国は俺達のものだから、お前ら全員出て行け、と言われて。

はいそうですか、と言えるはずがない。

こうして世界各国に、魔導師への憎しみを抱く人々が散らばっていった訳だ。

このことが、後々大きな争いの火種になる。

と、そんなことも知らず。

念願だった魔導師の国を設立した魔導師陣営は、早速国造り(笑)に取り掛かった。

これまで魔導師が散々差別されていた、その報復とばかりに。

今度は魔導師が非魔導師を差別し、虐げ、二等国民として扱い。

それどころか、大手を振って道を歩けるのは魔導師だけ。

非魔導師は職場も学校もなく、常に魔導師の顔色を窺わなければ、生きていくこともままならない。

魔導師は非魔導師がどれだけ反抗しても、死んでも、意に介さないし。

そのせいで更に、非魔導師は魔導師に対する憎しみを募らせていった。

一方の魔導師は、ようやく自分達がふんぞり返って暮らすことの出来る環境を手に入れて、万々歳。

各国の非魔導師がなんか文句を言ってる気がするけど、そんなの聞こえない。

我が世の春が来た。魔導師の時代が来た。これからは魔導師が世界の覇権を握る。

魔導師だからといって、虐げられていた時代は終わり。

嬉しくなったんでしょうねぇ。

魔導師達は、これまで非魔導師にされていたことを、倍にして非魔導師にやり返したんです。

魔導師の学校では、「非魔導師は魔法も使えず、非力で脆弱で、生き物の命を奪って糧を得なければ生きることも出来ない下等な種族」だと教える。

イーニシュフェルト魔導学院だと、まず有り得ない教育。

更に。

「魔導師こそが真に人種として優れており、旧人類である非魔導師を率いる存在」という、言わば選民思想を植え付け。

魔導師の地位を、非魔導師より上に位置付けようとしていた。

そして魔導師の国では、段々とそのような風潮に染まっていった。

魔導師こそが優れた新人類で、非魔導師は下等な旧人類であると。

ルーデュニア聖王国だと考えられないようなことが、平気で起きていた。

魔導師が何の理由もなく、ただ「ちょっと気分がむしゃくしゃしていたから」みたいな動機で、道を歩いていただけの非魔導師を殺したとしても。

それは、全く罪に問われる行為にはならなかった。

非魔導師は旧人類。だから殺され、淘汰されるのが当たり前。何も不思議なことはない。

魔導師は新人類。だから非魔導師より常に優位な立場にあり、非魔導師を管理するのが当たり前。

今となっては、自分で言っててかなりドン引きですけど…。

あの世界の価値観では、それが当然のことだったんです。