神殺しのクロノスタシスⅣ

それからですか?

それからは…幸せでしたよ、かなり。意外かもしれませんけど。

人生で一番幸せだったのって、あの頃じゃないかな。

リリスと一緒に生きてた日々。

朝目を開けたらリリスがいて、夜眠るときに、隣にリリスがいる。

夢みたいな毎日。

それこそ、夢のように過ぎていった。

…あのときは…うん。リリスが魔物だってことは知らなかったんですよ。

意外ですか?

でも、ほら…そう。

真実の愛は、種族間の壁を越えると言いますか。

言葉や理屈では、言い表せないものがある。

僕は、リリスが何であっても良かった。

僕にとってリリスは恋人で、親友で、家族だったから。

例えペットの犬でも、その人が家族だと思ったら、その犬は家族としてカウントされるだろう?

命を持たないぬいぐるみだとしても、ぬいぐるみを家族だと思えば、そのぬいぐるみは家族だろう?

それと同じだ。

僕がリリスを大切だと思って、リリスも僕を大切だと思って。

だったら、それ以上大切な理屈なんて存在しない。

僕はリリスが何者でも良かった。

さすがに、僕も馬鹿じゃないから。

幼い頃は気づかなくても、段々と一緒にいるに連れて、なんかおかしいなーとは気づいてた。

でも、別に気にならなかったし。

段々、人間じゃないんじゃないかな?とは思い始めてもきたけど。

何なら、いつか僕を食べてしまう鬼か吸血鬼の類なんじゃないか、とも思うことはあったけど。

それならそれで、別に構わなかった。

さして興味がなかった。リリスの正体が何者なのか、なんて。

いつか僕をぺろりと食べてしまうのなら、それでも良いと思ってた。

好きな女の子に食べられるのなら、それは本望だろう。

別にそれでも良かった。その日が来るまで、リリスの隣にいられるなら、それで。

だがまぁ、人間じゃないんだろうな、という疑いは、日に日に増していくばかりだった。

出会ったときから何年もたって、僕は成長して大きくなったけど。

リリスの方は、出会ったその日と、全く変わらないままだったから。

リリスの正体が気にならなかったのか、って?

うん、気にならなかった。

少なくとも、積極的に聞いてみようとは思わなかった。

リリスの方から話してくれるなら、聞くけど。

でも、こちらから聞こうとは、あまり思わなかった。

必要ならリリスの方から話すだろうし、それがないってことは、話す必要のないことなんだろう。

そう思ってスルーしていた。

…でも。

ある日、何を思い立ったか、ふと気になって。

あぁそう、学校で習ったんだった。

学校で、この世には魔物と呼ばれる存在がいるんだって教わって。

あれ?もしかしてこれ、リリスのことなんじゃないか?と思って。

それで気になったから、リリスに聞いてみた。

学校で魔物について教わらなかったら、多分一生聞いてなかったと思う。

そこて僕はリリスに、リリスは魔物なのかって聞いてみたら。

そうだよ、って言って。

それで初めて僕は、リリスが人間じゃないことを、本人の口から聞いたのだ。