…ともかく。

狼狽する二人のルームメイト達には、

「大丈夫だから、二人はこちらで探すから、心配しないで、授業の準備をしなさい」と言って送り出した。

生徒に余計な心配をかける訳にはいかない。

一難去ったと思ったら、また一難だよ。

今度は、生徒の家出。

しかもよりにもよって、一番探すのが面倒な二人が。

これは緊急事態と見て、俺とシルナは、教師陣を学院長室に呼びつけた。

そこで皆に、「元暗殺者組が家出したらしい」と告げると。

「なんだ、そんなことですか…。放っとけば戻ってきますよ」

と、イレース。

「家出ですか。良いですね、青春の醍醐味じゃないですか!」

と、ナジュ。

意外と反応が薄かった。

お前らには、危機感というものがないのか?

一方、天音はと言うと。

「えっ…。だ、大丈夫なんですか?それ。ま、また『アメノミコト』に脅されたとか…」

そう。俺達としては、そういう反応を期待していた。

前二人は、もうちょっと心配してやれよ。

「分からない。ただ、このメモと謎のへのへのもへじ人形を置いて、行方を眩ませたらしい」

「そ、そんな…」

絶句する天音。

「やっぱり、また『アメノミコト』が二人に何か…」

「その可能性はあるが…」

俺とシルナも、まず第一にそれを考えた。

そして、そうだったら最悪だと思った。

あの忌々しい鬼頭夜陰(きとう よるかげ)が、しつこい油汚れのような執念で、二人に手を出そうとしている…。

もしそうなのだとしたら、俺達は今すぐ、二人の後を追わなければならない。

でも…。

「そんなに心配しなくても、大丈夫だと思いますけどねぇ」

と、ナジュが言った。

「そんな、楽観的な…」

「だって、本人達も言ってたじゃないですか。当分の間は、『アメノミコト』は手出ししてこないだろうって」

「それは…そうだけど…。でも、それはあくまで『そうかもしれない』であって、絶対とは言い切れないし…」

天音の言うことは、もっともだ。

しばらくは『アメノミコト』も大人しいだろう、と俺達に思わせておいて。

やっぱり追撃します、と方向転換しかねない。

何考えてるか分からないが、ろくなことしか考えてないのは確かだからな。『アメノミコト』は。

もしかしたら、また二人にしか分からない方法で接触を図り。

生徒の身柄を人質に、何処かに二人を呼び出して…ということも有り得る。

何かあっても、隠すのが上手いからな。二人共。

平気な振りしながら、また俺達に何の相談もせず、自分達で解決しようと突っ走っている可能性はある。

あの、馬鹿共…。