神殺しのクロノスタシスⅣ

で、まぁ…ちょっと昔語りをさせてもらいますけど。

僕がまだ十歳にもならない頃。

僕はあの日、外にいた。

雨が降っていたのに、外にいて…公園のブランコに座ってた。

何で怪我したのかは覚えてないけど、顔が腫れていた。

多分、一緒に暮らしてた家族に殴られたか何かしたんだろう。

そういう家庭内暴力は、あの家では日常茶飯事だったから。

僕があの家族に必要とされていなかったのは、言うまでもない。

僕は誰にも必要とされていなかったし、逆に僕も、誰も必要としてなかった。

一人で生きてた。本当に、一人で。

ほら、僕ら魔導師は魔力があるから、何も食べなくても生きていけるじゃないですか。

そのお陰で、育児放棄されていようが、殴られて怪我しようが、平気で生きていられたんですよね。

だから…。

…あぁ、はい。寂しくはなかったですね。

何度も言うように、僕はあの世界しか知らなかった訳だし。

あのままリリスと出会わなかったら…僕は今でも、灰色の世界で生きてたんでしょうね。

リリスと合う前の僕は、世界の色なんて、白と黒しか知らなかった。
 
見える景色が全部モノクロで…。だから、僅かに残ってる幼い頃の記憶も、全部白黒写真みたいな感じ。

どんな色をしていたかは、ちっとも覚えてなくて。
 
でも、そんなことにも気づいてなかった。

そりゃそうだ。生まれたときから、白と黒しか見えてなかったんだから。

他の色があるなんて、知りもしなかった。誰も教えてくれなかったし。

そうじゃないんだって知ったのは、世の中には色んな…たくさんの色があるんだって知ったのは。

リリスと出会ってから。リリスに…出会った瞬間からです。

忘れもしない、僕の人生が始まった日。

あの雨の日、一人ブランコに揺られていた僕のもとに。

顔を上げたらそこに、リリスがいたんです。

あの瞬間ですね。

色盲だった僕の目に、様々な色が見えるようになって。 

世界が光彩に溢れて、生きている意味を見つけられたのは。

まさに、人生が始まった瞬間だったんです。