「やっぱり『八千代』も困ってんのかー。俺もだよ」
「だよね…」
深夜、いつものイーニシュフェルト魔導学院見回り隊として、学院の敷地内を巡回しているとき。
『八千歳』と、例の作文の話になった。
何でも、『八千歳』もまだ書けていないらしい。
その気持ちはよく分かる。
僕も、まだ一文字も書けてないから。
「あれって、何書けば良いの?」
「さぁ…。ツキナは、セルフいちご狩りするのが夢、って言ってたけど」
それは良いね、夢があって。
「僕らの夢って何だろう?『八千歳』、何になりたい?何をやってみたい?」
「何だろうなー…。昔は、『八千代』を越えることしか考えてなかったけど…。今はどうでも良いからなー」
そっか。
どうでも良くなってくれて、僕は嬉しいよ。
「イーニシュフェルト魔導学院の生徒は、大変だよね」
と、僕はずっと思っていたことを言った。
「大変?何が?」
「何になりたいか、自分が何をしたいのか、自分で考えなきゃならないんでしょ?」
「うん、そーだね」
「そんなの自分で考えるのって、凄く大変だと思わない?」
ましてやそれを、文章に起こして人前で発表するなんて。
大変だよ。
僕には出来ない、そんなこと。
思いもつかないよ。
「まー…。大変だよね、確かに」
「…考えたことなかったもんね、僕らは」
自分の夢や将来を、自分で決めるなんて。
それって凄く…贅沢だよね。
ここに来るまでは、そんなこと絶対有り得なかったから。
今更自分の夢を聞かれても、答えに困るよ。
自分の意志とは関係なく、『アメノミコト』に入って、暗殺者になることを強制され。
あそこでは、自分の意志を持つなんて許されなかったもんな。
ひたすら、自分の意志を殺して生きてきた。
駒として生きるに当たって、自分の意志なんか持つ者に価値はなかった。
だからこそ、幼い頃から自我を殺して生きる訓練をしてきたのに…。
今になって、自分がどうしたいのかと聞かれても…。
分かるはずないよね、そんなの。
確かに僕は、自分の意志で『アメノミコト』から抜け出して、イーニシュフェルト魔導学院に来たが。
あれは成り行きの部分もあるし、他に行き先がなかったから。
結局、僕自身の意志で何かを決めたことなんて、ないんだよな。
ましてや、暗殺だけを生業にしてきた僕に、将来なんて…。
…考える資格、あるんだろうか?
「だよね…」
深夜、いつものイーニシュフェルト魔導学院見回り隊として、学院の敷地内を巡回しているとき。
『八千歳』と、例の作文の話になった。
何でも、『八千歳』もまだ書けていないらしい。
その気持ちはよく分かる。
僕も、まだ一文字も書けてないから。
「あれって、何書けば良いの?」
「さぁ…。ツキナは、セルフいちご狩りするのが夢、って言ってたけど」
それは良いね、夢があって。
「僕らの夢って何だろう?『八千歳』、何になりたい?何をやってみたい?」
「何だろうなー…。昔は、『八千代』を越えることしか考えてなかったけど…。今はどうでも良いからなー」
そっか。
どうでも良くなってくれて、僕は嬉しいよ。
「イーニシュフェルト魔導学院の生徒は、大変だよね」
と、僕はずっと思っていたことを言った。
「大変?何が?」
「何になりたいか、自分が何をしたいのか、自分で考えなきゃならないんでしょ?」
「うん、そーだね」
「そんなの自分で考えるのって、凄く大変だと思わない?」
ましてやそれを、文章に起こして人前で発表するなんて。
大変だよ。
僕には出来ない、そんなこと。
思いもつかないよ。
「まー…。大変だよね、確かに」
「…考えたことなかったもんね、僕らは」
自分の夢や将来を、自分で決めるなんて。
それって凄く…贅沢だよね。
ここに来るまでは、そんなこと絶対有り得なかったから。
今更自分の夢を聞かれても、答えに困るよ。
自分の意志とは関係なく、『アメノミコト』に入って、暗殺者になることを強制され。
あそこでは、自分の意志を持つなんて許されなかったもんな。
ひたすら、自分の意志を殺して生きてきた。
駒として生きるに当たって、自分の意志なんか持つ者に価値はなかった。
だからこそ、幼い頃から自我を殺して生きる訓練をしてきたのに…。
今になって、自分がどうしたいのかと聞かれても…。
分かるはずないよね、そんなの。
確かに僕は、自分の意志で『アメノミコト』から抜け出して、イーニシュフェルト魔導学院に来たが。
あれは成り行きの部分もあるし、他に行き先がなかったから。
結局、僕自身の意志で何かを決めたことなんて、ないんだよな。
ましてや、暗殺だけを生業にしてきた僕に、将来なんて…。
…考える資格、あるんだろうか?


