神殺しのクロノスタシスⅣ

―――――…一方、その頃。

イーニシュフェルト魔導学院、園芸部の畑では。

「ウッホ、ウッホ、ウッホ」

「…」

「ウッホ、ウッホ」

…ゴリラ?

ゴリラかと思っただろう?

残念。ツキナだ。

ツキナが、ウッホウッホ言いながら…サトイモを収穫している。

何でウッホウッホ言ってるのかって?

俺にも分かんないねー。

でも、凄い可愛いから、何でもいーや。

しばらくウッホウッホタイムが続き、ようやくツキナは、腰を上げて汗を拭った。

「ふー!今日もたくさん穫れたぞ〜!」

それは良かったねー。

「見てーすぐり君。サトイモいっぱい穫れたよ!」

「うん。穫れたねー」

サトイモは俺も好きだよ。イモ系はナマでも齧れるし。

暗殺者時代に食べたことがある。

「何にして食べようかな〜。やっぱり煮っころがしかな!」

良いねー、夢が広がって。

…ん?そういえば…夢と言えば。

「ねーツキナ。畑仕事も良いけどさー」

「うん、花壇の方も見に行かなくちゃね!今はコスモスがたくさん咲いてて…」

「いやまー、それも良いんだけどさ」

そうじゃなくて。

ツキナって、本当生粋の園芸部だよね。

何で農業学校じゃなくて、魔導学院にいるの?

あ、でも魔導学院にいてくれなきゃ、俺がツキナと出会えてないから。

やっぱりここにいてくれて良かった。

それはともかく。

「ツキナはさー、もう小論文書いたの?」

「…ほぇ?」

土まみれの手で、掘ったばかりのサトイモを抱いて、くるりと振り返るツキナ。

きょとんとしたその顔を見てると、「あーやっぱりツキナを好きになって良かったなー」と、つくづく思う。