神殺しのクロノスタシスⅣ

ナジュがいないから、次は天音だな。

天音なら、保健室に行けば会えるだろう。

…と、思ったら。

「あれ?お前ここにいたのかよ」 

行方を眩ませていたナジュは、なんと保健室で、天音と一緒にいた。

「最近よく来てくれるんだよ」

と、天音が言った。

へぇ。

何か悪いことでも企んでるのか。

「失礼過ぎるでしょ…。何も企んでないですよ」

日頃の行いだな。

「ほら、僕思春期なんで。保健室の先生に、思春期のお悩みを相談しようとですね?」

何だよ、思春期のお悩みって。

何でも良いけど、悪巧みだけはするなよ。

「それで、羽久さん…どうかしたの?何かあった?」

「あぁ、そうだ。天音に聞きたいことあったんだ。ナジュにも」

「え、何?」

「ほう、何でしょう?思春期のお悩みなら、何でも答えますよ」

そういうのじゃねーから。

「イレースが出した課題だよ。小論文」

「あぁ…」

「あれ、もう終わった?」

天音とナジュが既に終わらせていたら、俺は相当危機感を覚えないと不味いな。

教員陣の中で、俺だけ終わってないってことじゃん。

あのシルナでさえ終わらせてるんだから、俺も急がないとやべぇ。

しかし。

「いや…まだ終わってはないかな…」

「僕もやってないです」

期待を裏切らない二人で良かったよ。

安心した。俺だけじゃなくて。

「失礼な。まだ執筆に至っていないというだけで、書くことは決まってますよ」

と、ナジュが言った。

え、マジ?

「ナジュは何を書くんだ?将来の夢…」

「僕には壮大な夢があるじゃないですか」

「壮大な夢?」

「えぇ。死ぬことです」

あぁ。

まぁ、お前はそうだよな。

気持ちは分かるが、そんな笑顔で言うことではないからな。

めちゃくちゃ良い笑顔で言いやがったよ。