神殺しのクロノスタシスⅣ

じゃあ次は、ナジュにでも相談してみよう、と思ったら。

「あれ…いないな…」

職員室にいるかと思ったら、そこにナジュの姿はない。

何処行ったんだろう…。稽古場か?

すると。

「あぁ、忙しい忙しい」

ナジュはいなかったが、その代わりに。

テキパキテキパキと、書類の山を次から次へと捌く、イレースの姿があった。

あー、うん。イレースでも良いや。

今回の小論文課題発案者のイレースは、どんな将来の夢を語るのだろう。

話しかけたいんだけど、めちゃくちゃ忙しそうだから、話しかけて良いのか分からない。

「邪魔です」とか言われそう。

すると。

「ああ。そういえば小論文課題を、私も書かないといけませんね」

おっ。

俺が聞くまでもなく、イレースは原稿用紙を手に取った。

この場で書くらしい。

ちょっと、聞き耳立てておこう。

え?盗み聞き?

何もしてないけど、偶然聞こえてしまったということで、許してくれ。

「やはりまずは…学院の体制改革が、目下の課題でしょうね」

ん?

「まずは来年度の、学院長の無駄な菓子代予算を激減、この先十年を目処に、完全に排除することを目標に…」

…。

「それから授業改革…。夏休みと冬休みに特別講習を行い、生徒の基礎学力を向上」

…。

「あとは何より、教員の質を改善。特に、あの読心色ボケ教師。これは国内で行われている、魔導教育委員会主催の魔導学院教師育成講習に、強制的に参加させることによって…」

…成程。

もうこれ以上、聞く必要はなかった。

イレース、お前の原稿用紙、5枚で足りる?

放っといたらマジで、500枚くらい書きそう。

しかも、恐ろしい将来の夢をお持ちだ。

…よし。聞かなかったことにしよう。