神殺しのクロノスタシスⅣ

将来の夢…目標…と言われてもなぁ。

いきなり言われて、これです!とぽんと出てこない。

むしろ、出てくる人いるのか?

いや、出てくる人もいるだろうけど。

どうにも俺は、こういうことを考えるのが苦手だ。

ましてやこれ、教師仲間の間で発表会するんだろ?

俺だけ貧弱な夢だったら、場が白けること間違い無し。

別に盛り上がる為の企画じゃないとはいえ…。

皆が立派で壮大な夢を語ってるのに、俺だけがつまんない夢だったら、一人だけ凄く浮くよな。

それは嫌だ。

そんな訳で。

とりあえず俺は、シルナに相談を持ちかけてみることにした。

多分シルナも、俺と同じく、この課題に苦しんでいるだろうと思ったのだ。




…が、しかし。

「私の将来の夢…?それはね、凄くいっぱいあるよ!まずはヴィクトリアサンドイッチを食べる!」

…お前。

まだ、それ諦めてなかったのか。

「それからそれから〜、文化祭で配るお菓子を、奮発して『ヘンゼルとグレーテル』で買う!」

…お前。

どんだけ、その店好きなんだ。

怒られるぞ、またイレースに。

「そして、全国津々浦々、お菓子と名のつくものを全て食べる!」

めちゃくちゃ壮大な夢だ。

「これが私の夢だよ!」

そりゃご大層なことだな。

「書くことがいっぱいだよ〜!私の食べたいお菓子は、まだまだたくさんあるからね!」

将来の夢、の小論文のはずが。

シルナの食べたいものリスト、に替わっている。

そうじゃないだろ…。イレースは別に、そういうものを求めている訳じゃないと思うぞ。

書き直し食らうぞ?

まぁ、書くことが盛り沢山あるのは、素直に羨ましい。

シルナ、全然困ってなかった。

むしろ、書くことがたくさんあり過ぎて困ってるくらい。

良いなぁ、お前。

俺もそういうのが良かった。

いや、お菓子について語りたいとは思わんが。

何かに熱中出来るものがあるというのは、それだけで良いことだ。

「羽久は?羽久もお菓子について書かない?」

「いや俺は…遠慮しとくよ…」

「何で!?」

何でって、俺はお前ほど、甘いものに執着してないから。

書くとしても別のことを書くよ。

思いの外、シルナは味方じゃなかった。