令月の生徒手帳は、これまで見たどんなデコ生徒手帳とは異なり、独特の異彩を放っていた。

枯れた葉っぱや木の枝、インディアンのお面のミニチュアみたいなのもくっついてる。

怖いんだけど?

「どう?センス良いでしょ?」

そんな、嬉しそうに目を輝かせて言われても。

お前のセンスどうなってるの?

シルナなんか、顔が引き攣ってるんだけど?

怯えて悲鳴をあげなかったのは偉い。

しかしこのデザイン、何処かで見たことがあるような…。

「これはね、ジャマ王国に伝わる、魔除けのお面がモチーフなんだ」

そう言われて理解した。

前作ってたよな、令月…。ナジュが倒れたとき。

ジャマ王国の名産だって、えげつない顔したお面を。

あれを枕元に置いとくと、病気や怪我が早く治るんだとか。

俺だったら、あんな恐ろしいものを枕元に置かれたら、逆に病気が長引きそうだけど。

それよりも。

「あのさ、令月…。気になることが二つあるんだけど」

聞いても良いだろうか。

「何?」

「この…ケースの縁に貼り付けてる、骨…?みたいなのは何なんだ?」

「それは骨だよ」

何の?

何の骨?誰の骨?

何処から持ってきたんだ?鶏…鶏とか?

「それと…なんか、何処となく…生臭い匂いがするんだけど、気のせいか?」

「あぁ、魔除けの効果を高める為に、一晩血に浸けておいたから」

触ってしまったことを深く後悔した。令月の生徒手帳。

俺は、慌てて生徒手帳を令月に押し返した。

何の血だ。誰の血なんだ!?

「生徒手帳にもなるし、お守りにもなるし…一石二鳥だ」

何?そのドヤ顔。

流行りに乗っかるのは良いが、お前のセンスは人とは並外れて恐ろしい。

「…イレース」

「何です」

「デコレーション生徒手帳禁止令…出した方が良いのかもしれない」

「もう遅いですよ。馬鹿ですね」

…そうか。

俺も、そうなんじゃないかと思ってたところだよ。

悲しいことにな。