神殺しのクロノスタシスⅣ

「実は僕も今日、生徒手帳に飾りをつけたんだ」

「へぇ?『八千代』も一応、流行りに乗っかってるんだ」

「うん」

「どんな感じにしたの?『八千代』は。千鳥模様とか?」

そういうのでも良かったんだけど。

「ほら、こんな感じ」

僕は、出来上がったばかりの生徒手帳を見せた。

「へー。ジャマ王国の魔除けのお面みたい」

「そう、それがモチーフなんだ」

などと言いながら、僕達は校舎内に入り込んでいた。

校舎内に不審者が侵入していないか、パトロールだ。

え?鍵はかかってないのかって?

かかってたよ。針金で開いたけど。

『八千歳』が、お喋りついでに開けてくれた。

ので、僕達は足を止めることなく校舎内に入り、廊下をてくてくと歩く。

「良いねー、それ。お守り代わりになりそう」

「でしょ?」

やっぱり、『八千歳』はこのセンスを分かってくれる。

だから好きだ。

「でも、ジャマ王国のお面がモチーフの割には…骨がついてなくない?」

ほら、こういうところにも気づいてくれるし。

やっぱり、骨は大事だよね。

「そうなんだよ。だから、あとは骨を調達したら完成なんだ」

「ふーん…。…やっぱり骨がないと、お守りって感じがしないねー」

「だよね」

明日にでも骨を調達して、くっつけておこう。

そうしたら完璧だ。

「それに、ツキナに聞くところによると、生徒手帳に良い匂いをつけるのも流行りらしいよ」

と、『八千歳』から耳寄りな情報を得た。

匂い?

「どうやってつけるの?匂いって…」

「え?なんか、香水をつけたり、香り袋みたいなのを挟んだり…ツキナはお日様の匂いが良いからって、太陽の下に干してたけど」

それ、何か匂いがつくの?

でも、そうか。匂いをつけるんだ。

それは面白いかもしれない。

「僕も、何か香りをつけてみようか。何の匂いが良いかな」

「ジャマ王国のお面だからなー。やっぱり、血の匂いが良いんじゃない?魔除けにはぴったりだよ」

「確かに」

野生動物の、生臭い血の匂いが良いね。

素晴らしい魔除け効果を望めそうだ。

身分証明代わりにもなって、お守りにもなるなんて、一石二鳥だ。

「じゃあ、骨を用意するときに、一緒に血も取っておくよ」

「うん、それがいーね」

やっぱり『八千歳』とは話が合うなぁ。

今夜も、大変充実した夜のパトロールだった。