神殺しのクロノスタシスⅣ

「ユイトのクラスでは、流行ってないの?」

この、飾り生徒手帳。

「それは…流行ってはいるけど、俺はまだやってないから…」

そうなんだ。

時代の波に遅れてるんだね、ユイトは。

「だったら、僕が用意したこれ…材料の余り、使っても良いよ」

「えっ!?」

「はい」

僕は、生徒手帳カバーに飾り切れなかったデコレーションパーツの余りを、ユイトに渡した。

しかし、ユイトは呆然とするだけ。

どうしたんだろう。

「どうかした?」

「え?いや…。これ…これ、何?鳥の羽根みたいなの…入ってるけど」

「あぁ。それはカラスの羽根」

「カラスの羽根!?」

そんなにびっくりする?カラスの羽根くらいで。

その辺によく落ちてない?

まぁ、僕が今回用意してのは、落ちていたものではないけど。

「ひ、拾ったの?こんなに…。よく見つけたな…」

「ううん。捕まえた」

「!?」

「餌付きのトラップを仕掛けて捕獲して、羽根を何枚か毟って、終わったら放したんだ」

「…!カラス可哀想…!」

可哀想?何が?

折角捕まえたから、そのまま焼き鳥にして食べようかな、とも思ったんだけど。

あの日は焼き鳥の気分じゃなかったから、やめといた。

「そ、そこはさ…!羽根を使いたいんだとしても、ちゃんと既製品の…!市販で売ってるものを使おうよ」

「何で?何でも捕れたて新鮮の方が良いよ」

「そ、そんな…」

「だから、その生徒手帳カバーに使ってる素材は…全部天然物だよ」

「ひっ!」

何で怖じ気づいてるんだろう。

大したものは使ってないよ。

動物の羽根と、虫の抜け殻、拾った石と、乾燥させた葉っぱ。

そして、地面から掘り出した粘土を固めて作った、小さな粘土細工。

これらを組み合わせて、手作りの生徒手帳カバーを制作した。

我ながら良い出来だと思う。

「何でそんな…おどろおどろしいデザインなの…?」

「?僕の故郷に伝わる、魔除けのお面をモチーフにしたんだよ」

生徒手帳と言ったら、やっぱり普段持ち歩くものだから。

折角ならお守り代わりにしようと思って、魔除け効果を取り入れてみた。

これで見た目もぐんと良くなって、ついでに魔除けの効果もあるんだから。
 
これぞ、一石二鳥というもの。

「あとは、縁に骨を飾れば完成なんだ」

「ほ、骨…。骨って何の骨…?鶏…?」

という、ユイトの質問に答える前に。

「あ、そろそろ夜のパトロールの時間だ」

「…?」

「じゃあ、ちょっと行ってくるね」

「え?いや、消灯時間…」

ユイトが、何か言っていた気がするが。

僕は聞こえなかったことにして、部屋の窓をガラリと開け。

そこから、ぴょーんと飛び降りた。