神殺しのクロノスタシスⅣ

…と、そんな訳で。

俺の生徒手帳は、ツキナの手によってデコられてしまった。

面白みのない、黒ケースから取り外された生徒手帳は。

ツキナと同じ、大根模様の布で作られたケースに入れ直された。

いらっしゃい、大根。

そして、ツキナが使ったのと同じ、野菜&果物シールをぺたぺた貼られた。

俺の生徒手帳が、どんどん野菜色になっていく。

…健康に良さそうだ。

更に、デコレーションが一通り完成したところに。

「すぐり君、これ、干しておこうよ」

…。

…ん?

干す?そんな…大根みたいに。

「これって、何を?」

「生徒手帳!生徒手帳干しておこっ」

目をきらきらさせて、意味不明なことを言うツキナ。

この訳分からないところ、凄い可愛いよ。

「何で干すの?」

そんなシケってないよ、俺の生徒手帳。

大根模様のケースに入っているとはいえ、本物の大根じゃないんだから。

「えっとねー、お日様の匂いがしたら嬉しいかなーって思って!」

うん、分かんない。

ツキナが何考えてるのか、俺ぜーんぜん分かんないや。

でも可愛いから良いか。

「ちょっと、イチから説明してもらっていーかな?」

「あのね、皆、生徒手帳に良い匂いをつけるのも流行ってるんだよ」

その説明で、何となく理解した。

匂い。匂いか。

…生徒手帳に、匂いって必要?

「皆、香水とかコロンとかスプレーとか噴いたり、あと匂い袋を挟んだりして、生徒手帳に良い匂いをつけるんだよ」

「…へぇ…」

見た目だけじゃなく、匂いまでつけるとは。

最近の若い子?って言うのは、面白いこと考えるよなー。

別に生徒手帳から何の匂いがしようが、関係な…。

…まぁ、嫌な匂いがするよりは良いか。

よりお洒落なデコレーションをして、更にお洒落な匂いのする生徒手帳を持ち歩くのが、お洒落なんだな。

成程。

「だから、二人で生徒手帳を干そう!」

で、何でそうなるの?

繋がらないなー…。ツキナが何考えてるのか、やっぱり分からないや。

説明をされてるのに分からない。