神殺しのクロノスタシスⅣ

…それで。

「どーしたの?その生徒手帳」

何だか、もとの原型を留めないほどに野菜化してるけど。

「デコ生徒手帳だよ」

と、ツキナは目をきらきらさせて答えた。

…でこ、生徒手帳?

…おでこ?

「今流行ってるでしょ?自分の生徒手帳をこうやって、好きなようにカスタマイズするの」

と、説明されて気がついた。

デコとは、おでこのことじゃなくて。

デコレーションのデコなのか。成程ね〜。

「そーいえば、クラスの女子がやってたね」

ツキナも、クラスの女子の一人だけどさ。

他の女子達も、生徒手帳を囲んで、何やらわちゃわちゃしてるなーと思ってたら。

これをやってたのか。このデコ生徒手帳なるものを?

「でしょ〜?皆、それぞれ生徒手帳を可愛くデコってるんだよ〜。だから、私も流行に乗ってみました!」

ででん、と自分の生徒手帳を掲げるツキナ。

へぇ。変わったことやってるねー。

「すぐり君は?すぐり君は、どんな生徒手帳なの?」

俺?

「俺はふつーのだよ?何も手を加えてない…。ほら」

俺は何の変哲もない、黒ケースの生徒手帳を出した。

何なら、もらってから一度も開いたことないけど。

「え〜?すぐり君もデコろうよ」

いや、俺はそんな、デコ生徒手帳なるものが流行ってるなんて、今知ったばかりだからさ。

「可愛いよ〜。すぐり君の生徒手帳も、可愛くしよっ」

ツキナの目、きらきら。

俺は別に生徒手帳が大根模様だろうと、デフォルトのままだろうが、何でも構わないけど…。

でも、好きな女の子に誘われたら…嫌だと言う訳にはいかないよねー?

「うん、いーよ」

「本当?やったー」

喜んどる喜んどる。

やっぱりツキナの笑顔は、最高にかわい、

「じゃ、すぐり君の生徒手帳も、私と同じ、大根の生徒手帳にしてあげるね〜!」

…。

…うん。

…いや、いーよ?俺は。

好きな女の子の、笑顔の為だったらさ。

俺の生徒手帳が大根模様になろうと、構わないよ。

しかも、前向きに考えよう。

俺も大根模様になったら、ツキナとお揃いじゃん。

好きな女の子と、お揃いの持ち物を持てるなんて。

いやぁ、嬉しくて涙が出そうだなー(棒)。