神殺しのクロノスタシスⅣ

…あれ?でも、それじゃあ、何で。

賢者の石以外の魔法道具も、ちゃんと封印されていたと言うなら。

何で『白雪姫と七人の小人』を始め、その他の魔法道具までもが、世の中に出回ることになってるんだ?

「…これは、俺の推測だが」

と、珠蓮が言った。

「ミルツとは別に、イーニシュフェルトの里の遺産に目をつけた者がいるんだろう。そしてそいつは、賢者の石の封印が解かれたのを機に、火事場泥棒で、他の魔法道具の封印に手を出したんだ」

…なっ…!

「犯人は、イーニシュフェルトの里の遺産を知っている。そして、何らかの目的を持って…魔法道具を盗み出し、世の中にばら撒いているんだ」

…何だって?

何で、そんなことをする必要がある。

本当にそんな人物がいるとして…そいつは一体、何を企んでるんだ?

「そいつも…魔導師排斥論者なのか?」

「さぁ。そこまでは…」

分かる訳ないよな。当たり前だ。

そんな危険極まりない封印に、ホイホイ手を出すような奴が何を考えているかなんて、分かるもんか。

「秩序を乱すのが目的なのか、それとも他に、何か目的があるのか…」

「…」

「それを探る為にも、俺は再び、旅に出ようと思う」

と、珠蓮が言った。

…そうか。

「いずれににしても、全ては賢者の石の封印が解かれたことが原因だ。俺の責任でもある」

「珠蓮…」

「だから、俺が探す。俺が探る。何か分かったら、すぐにお前達にも連絡する」

…また、あの賢者の石の欠片を通して、か。

便利な連絡アイテムだもんな。

「必ず、全ての魔法道具を、俺が在るべき場所へと戻す。イーニシュフェルトの里の遺産を継ぐ者として」





という、珠蓮の堅い覚悟を幕引きに。

ひとまず、『白雪姫と七人の小人』騒動は、幕を下ろしたものの。

今度はまた…俺達の先行きに、不穏な影を落とすことになった。