神殺しのクロノスタシスⅣ

「珠蓮…。他の魔法道具って、どういうことだ?」

俺は、直接珠蓮に尋ねた。

すると。

「イーニシュフェルトの里に遺る遺産は、賢者の石や、『白雪姫と七人の小人』だけではない。里で研究されていた、様々な魔法道具が封印されていたんだ」

難しい顔をして、そう説明してくれた。

「どうも今、その魔法道具の封印が、次々に暴かれているらしい」

…マジで?

それって、もしかしなくても…とてもヤバいのでは?

だって、あの化け物白雪姫だけでも、こちとら死ぬほど苦労させられたのに。

あんな魔法道具が他にも、あちこちで出土してるってことだろ?

それは、人間の手に負えるものなのか?

「俺も気づいたのは、『サンクチュアリ』の一件が片付いた後だった。どうも、賢者の石の封印が暴かれたことを皮切りに、これまで封印されていた他の様々な魔法道具も、この世に戻ってきているらしい」

「…」

「俺はその魔法道具を回収する為に、再び旅をしていたところだったんだ」

…そうだったのか。

その旅の最中に、俺達がヘルプ要請をしたから、中断してこちらに戻ってきてくれたんだな。

それは申し訳ない。

ってことはやっぱり、『白雪姫と七人の小人』みたいな魔法道具が、各地で確認されているということなんだな。

もしかしなくても、ヤバいな。

「そんなことが…。…まさか賢者の石の封印一つで、そんなにたくさんの封印が解かれるなんて…」

賢者の石っていうのは、大きな宝箱にしまわれていたようなものなんだな。

一度その宝箱を開けてしまったら、一番値打ちのある「宝石」である賢者の石は勿論。

同じ宝箱に入っていた、他の宝石、貴金属も、一緒に持ち出せる。

何て言うか…あまりにも…。

…不用心、だよな?

賢者の石は賢者の石、別の魔法道具は魔法道具で、ちゃんと封印を分けておけば良かったのに…。

内心そう思ったが、封印の守り人である珠蓮の手前、言い出すことは出来なかった。

…の、だが。

「封印ガバ過ぎるだろ、もっとちゃんと監理しとけや、って羽久さんが言ってますよ」

「おま、ばっ…!」

人の心を勝手に読んだナジュが、かなり口の悪い言葉で俺の考えをバラした。

おい。やめろよ馬鹿。

そこまでは思ってねぇよ。

これには、さすがの珠蓮も気を悪くするかと思われたが。

それより、ずっと意外な答えが返ってきた。

「いや、封印は元々ちゃんとしていたんだ」

「…は?」

「賢者の石の封印と、紐付されていたのは確かだが、しかし賢者の石の封印が解かれたからと言って、他の魔法道具まで勝手に持ち出されるほど、弱い封印ではなかった」

…え。

…そうなの?