――――――…。

「…ん…」

深い泉の底から浮き上がって、久し振りに陽の光を浴びるような。そんな気分。

それこそ、長い封印から目を覚ましたような感覚。

あぁ、またかと俺は思った。

俺は、また…「入れ替わって」たのか。

「…シルナ…」

「羽久?…羽久かい?」

シルナの声がする。

ってことは、シルナも…無事だったのか。

そもそも俺は…何をやってたんだっけ…?

何だか身体がダルくて…何も思い出せな、

ん?

…そうだ、俺、さっきまで。

白雪姫の化け物と…戦ってなかったか?

あの白雪姫はどうなった?

「シルナ…!あいつ、白雪姫どうなっ…っ…」

「ちょ、羽久!起き上がっちゃ駄目だよ」

勢いよく起き上がって、そして後悔した。

凄まじい倦怠感と、内臓が傷ついたことによる痛み。

出血したせいか、入れ替わっていたせいか…頭がふらふらする。

「さっきまで回復魔法かけてたけど、でも完治はしてないから。まだ起き上がっちゃ駄目」

「…あぁ…」

俺も後悔したところだよ。

あの白雪姫…よくもやってくれた。

すると。

「軟弱ですね。ちょっとばかり内臓が潰れただけで」

「…ナジュ…」

服が血まみれになっているナジュが、けろっとした顔を覗かせた。

お前…無事だったか。

あと…お前の常識がおかしいだけで、普通の人間は、内臓が潰れたら動けないんだよ。

「ナジュ君も無理しちゃ駄目なんだよ…。肺の方まで抉られてたんだから…」

ナジュの後ろから、天音が苦言を呈していた。

あぁ、天音も無事だったんだな。

ってことは…。

「ようやく起きましたか」

「羽久なの?これ羽久?」

「ふつーに喋ってるし、羽久せんせーなんじゃない?」

イレース、令月、すぐりの三人が、揃って姿を現した。

良かった。やっぱりお前らも無事だったか。

そして。

「無事で何より」

「…珠蓮…」

お前が、皆を守ってくれてたんだよな。

ありがとう。

ともかく、全員が無事なようで…安心した。