今にも破壊せんとしていた白雪姫の前で、二十音はピタッ、と止まった。

あ…。

そして二十音がかけた魔法は、白雪姫を破壊する魔法ではなかった。

白雪姫が、彫刻のように固まった。

二十音が時魔法で、白雪姫を止めたのだ。

私の言うことを、聞いてくれたのだ。

「二十音…」

私は、感慨深さでいっぱいになった。

良かった。ちゃんと聞いてくれたね。

…ありがとう。

なら、私も応えないと。

私は白雪姫の背後から手を回し、白雪姫の顎を掴んで、口の中に「それ」を含ませた。

瓶だ。

白雪姫が、大事に両手で握って眠っていた、瓶。

その瓶に入っている透明な液体を、白雪姫に飲ませた。

これは毒だ。

かつてイーニシュフェルトの里で、白雪姫が暴走したとき。

あのときも、この毒を飲ませて白雪姫を眠らせた。

そういうものだ。白雪姫というのは。

「白雪姫は、毒を飲んで眠る。…だから眠りなさい。また…長い眠りに」












透明な液体が、白雪姫の喉を通ると同時に。

白雪姫は、力を失ったように崩れ落ちた。

その目は、再び固く閉じられていた。

「…お疲れ様、二十音…ありがとうね」