「っ…!二人共!大丈夫か!?」

りんご砲の衝撃を、賢者の石で相殺しながら。

珠蓮が叫ぶのが聞こえたが、俺には何処か、遠くの世界で聞こえているような気がした。

「ぐっ…。…はぁ…」

俺は返事をすることが出来ず、代わりにみっともない埋き声をあげるだけだった。

…さすがに、りんご砲二発は痛かったよ。

容赦なさ過ぎだろう、この白雪姫。

継母なんかより、余程殺意の塊だ。

「は…羽久…!だ、大丈夫…」

俺が思いっきり突き飛ばしたシルナは、壁に激突して床に転がり。

何とか立ち上がりながらも、気にかけるのは自分のことではなく、俺のことだった。

馬鹿かよ…。俺じゃなくて、自分の心配をしろ。

まぁ、立場が逆なら…多分俺も同じことをするだろうから、人のことは言えないけど…。

これ以上、シルナを心配させられない。

そう思って、俺は何とか身体を起こし、立ち上がろう…と。

したのだが、それは出来なかった。

「え、あ」

「…!羽久!」

自分の意志に反して、俺は膝をついてその場に崩れ落ちた。

嘘だろ、おい。

ついでに、再度血を吐き出し、ぜいぜいと肩で息をした。

畜生…。あのりんご砲、どんな威力してるんだ…。

しかも、あの白雪姫は疲れることを知らない。

奴は、再びりんご砲をチャージし始めていた。

今度は、さっきまでのりんご砲より、威力を増大するつもりらしい。

今度は避けられるだろうか?あれ、当たったら意識飛ぶな。

俺は良いとして、シルナは逃さなければ。

「あ、の…野郎。調子に、乗りやがって…」

口元を拭って、やっとまともに声が出せた。

早いところ蹴りをつけないと、ジリ貧だぞ。

やっぱり…俺が加速して懐に入り。

今度は胴体を破壊するだけではなく、胴体も頭部も手足も全部、一撃で破壊出来るほどの魔力を叩き込むか…。

それが、多分一番確実な方法だ。

魔力の上限なしに動けるのなら、もう身体ごと破壊して黙らせるしかない。

またりんご砲を食らう前に、早く…。

しかし。

「羽久…!落ち着いて。あの白雪姫は…倒し方があるんだ」

シルナが、床に転がった棺桶の中に手を突っ込んだ。

…?何やってんだ?

それに、白雪姫の倒し方って…?

「昔も、白雪姫が暴走して手がつけられなくなって…。でも、この方法で…白雪姫を殺すことが…」

と、シルナが言いかけたとき。

立ち上がろうとした俺は、床にぺたりと座り込んでしまった。