避ける暇は勿論、受け身を取る暇もなかった。

りんご砲をまともに食らった俺は、思いっきり後方に吹き飛ばされ。

学院長室の壁を貫通する勢いで、壁に叩きつけられた。

「がっ…は…」

背中が壊れるかと思った。それくらいの衝撃だった。

痛みと言うより衝撃の方が強くて、目の前に火花が散ってる。

「羽久!!」

さっきから、シルナが叫んでる声がするのだが。

その声に答えられない。まず、声が出ない。

肺から空気を搾り出そうとしても、酸欠でも起こしたかのように、何も出てこない。

代わりに。

「…がはっ…。げほっ…ごほっ…」

拳大はあろうかという、血の塊が口から飛び出した。

今、背中をぶつけたせいで…内臓に傷がついたか。

この軟弱者め。玩具の白雪姫にここまでやられるとは。

フィールドが狭いのと、珠蓮達に攻撃の飛び火が行かないよう、制限して立ち回っていたのが仇になったな。

いや、別に後悔はしていないが。

そもそも、胴体に風穴開けられてるのに、普通に動いているのが計算外だった。

少しは動きが止まると思ったのだが、関係なかったらしい。

さすがお人形。痛みは感じないし、身体が壊れようが、完全に破壊されるまでは動き続けるのか。

こんな状況でも、俺は割と冷静に判断していたのだが。

俺が血を吐くのを見て、俺以上に動転していたのが、シルナだった。

「羽久!しっかり…」

シルナは、あろうことか白雪姫に背を向け、俺の方に駆け寄ってきた。

おま、こいつ。

俺に構うな。そんなことしてたら…!

案の定。

「っ!!馬鹿、シルナ!後ろだ!」

「!?」

シルナの背後から、再び巨大りんご砲が発射された。

俺は思いっきりシルナを突き飛ばし、りんご砲の射線から外した。

代わりに。

お返しとばかりに、今度は俺の土手っ腹に、りんご砲が着弾した。