神殺しのクロノスタシスⅣ

巨大りんご砲を、何とか回避したと思いきや。

「ウ…ガォォォォォ!!」

「はぁ!?」

今度は、大量の割れたガラスの破片を召喚した。

何だあれは?もしかして、割れた鏡?

一応、童話の白雪姫をあやかっているようだが。

ここまで怪獣のように暴れたんじゃ、もう童話どころではない。

なんて殺意の高い白雪姫なんだ。継母なんか目じゃないぞ。

「ギャオォォォォォォ!!」

「くっ…!」

次々と繰り出される破片を、俺は懸命に躱した。

それでも、細切れのように降り注ぐ鏡の破片。

しかも、何故か俺の方にばかり集中砲火だ。

俺の方が勝てそうと思っているのだろうか?

正解だが。

「羽久!」

「大丈夫だ!」

心配して声をかけるシルナに、強がってみたは良いものの。

「eimt…ptos!」

時魔法で白雪姫の動きを止めようにも、止まってくれるのは僅かな時間のみ。

その間に体勢を整えようとするのだが、すぐさま魔法を解除した白雪姫が、怒涛のような攻撃を仕掛けてくる。

そのせいで、俺は防戦一方だ。

とにかく、逃げるのに必死。

「ちっ…」

しかも、白雪姫の動きは止められても、無数のりんご砲や、鏡の破片までは全て止めきれない。

こいつ、いつまでこんなめちゃくちゃな動きが出来るんだ?

大量の魔力に物を言わせた物量攻撃が、いつまでも止まない。

これじゃ、いずれ押し切られる。

魔力が底を突くということがないのか、この化け物は。

まぁ、生身の人間ではなく、人形だからな。

疲れるということは知らないし、いつでも全力フルスロットルで動けるのだろう。

このチートめ。

だったら…。

「eimt…ot eccelerata」

一息に、攻撃を叩き込むまで。

俺は時魔法で自分の身体を加速させた。

いつも使う、俺の時魔法の十八番だ。

自分を極限まで加速させて、一気に敵の懐に潜り込む。

俺は瞬時に白雪姫の背後に回って肉薄し、その背中から土手っ腹に向かって、

「sarknesd」

渾身の、魔力の塊を撃ち込んだ。

ミシミシベキベキ音がして、白雪姫の胴体のど真ん中に、巨大な風穴が空いた。

よし、ようやく攻撃が入った。

これでもう動けま、

「羽久!!」

「はっ!?」

動けないだろう、と思ったのも束の間。

背中を向けていた白雪姫の首が、ギュンッ、と回って、こちらを向いた。

気色悪っ!

おまけに。

「ゴォアァァァァァ!!」

「!?」

「羽久っ!!」

ガパッ、と口を開けた白雪姫の口から。

巨大りんご砲が、俺に向かって炸裂した。