神殺しのクロノスタシスⅣ

「令月君、すぐり君、逃げて!相手しないで!」

応戦しようとした元暗殺者組に、シルナがそう叫んだ。

すると令月もすぐりも、即座に臨戦態勢を解き、二人共それぞれ左右に散った。

この辺りの判断力の速さは、さすがのものだ。

で、相手しないで、ってそりゃどういうことだ。

「イレースちゃんも、相手しちゃ駄目だ。天音君とナジュ君も」

更にシルナは、そう言って教師陣を止めた。

そして次に、珠蓮の方を向いた。

「珠蓮君!お願い、賢者の石で皆を守って欲しい」

何…?

「それは構わないが…何故俺なんだ?」

「『白雪姫と七人の小人』も、元を正せば魔力が動力源だ。魔封じの力を持つ賢者の石なら、白雪姫も手を出せないから」

成程。

こちらも、白雪姫の攻撃を無効化出来る訳か。

賢者の石様々だな。

「それに、あの白雪姫にまともに相手が出来るのは、私と羽久と珠蓮君だけなんだ」

…!

さっきから、度々言おうとしていたのは…それか?

「白雪姫は、契約者の魔法は通さない。つまり…白雪姫の小人と契約したことのある人間の魔法は、一切無効化されてしまうんだ」

「…な…!」

なん…だ、その意味不明な設定!

失敗作と言っていたが、本当に大失敗作だな!

「何でそんなことになるんだよ!?製造責任者は誰だ!」

「ごめん…私の元友人」

それは悪かった。

「よくそんなポンコツを作ったもんだな、お前の元友人は…」

「こ、子供の遊び道具を作りたかったらしいんだけど…。な、何だか…上手く行かなったみたいだね…?」

不器用かよ。

今その不器用のツケが、何万年も経って回ってきてるところだよ。

「確か、当時も暴走した白雪姫を抑えるのに苦労したらしくて…」

などと言いながらも、俺とシルナは飛び回って逃げていた。

珠蓮は、令月達を始め、ナジュの治療に当たる天音を、賢者の石で守ってくれていた。

その間も白雪姫は、奇声をあげながら辺り構わず攻撃しまくっている。

完全にホラー映画。

血まみれのドレスが、一層怖さを引き立てている。

俺、もう一生白雪姫は見られないな。

「そのときは、どうやって抑えたんだ!?」

「えぇと、それが確か、」

と、シルナが言いかけたそのとき。

白雪姫が、巨大な紫色のりんご…に、似せた魔力の塊を作り出した。

何だあれ!? 

驚く暇もなく、白雪姫は巨大りんご砲を、こちらに向かって投擲してきた。

「うぉわっ!!」
  
それが白雪姫のやることか?

暴力的にも程がある。最早、メルヘンな童話は何処へやら、だ。