神殺しのクロノスタシスⅣ

その前に、俺の時魔法も。

俺の時魔法も、あの白雪姫、いきなり解いたよな?

一応効くには効いたけど、長時間は効かなかった。

でも令月とすぐりの魔法は、僅かも通ることなく、なかったことにされた。

これはどういうことだ。

何故俺の魔法だけは通じて、令月とすぐりの魔法は通用しないんだ?

そういえばさっき、シルナかビビり散らしながら、何か言ってた気が…。

と、考えていると。
 
「rhundet」

イレースが、お得意の雷魔法を発動させ。

白雪姫の脳天に、直接裁きの雷を叩き込んだ。

が。

その魔法も、白雪姫の身体に届く寸前、霧のように消えた。

まただ。魔法が通じない。

「…魔法を通さないんですか?あの木偶の坊は」

木偶の坊呼ばわり。

「いや、でも俺の時魔法は効いたんだ。効いた時間は短かったけど、確かに効いた」

それなのに、何故他の人間の魔法は通さない?

すると、シルナが。

「やっぱり…記憶にある通りだ」

と、意味深なことを言った。

さっきまで、ホラー映画的展開にビビりまくっていたシルナだが。

ようやく正気に戻ったか。

「どういうことだ?シルナ」

「以前…里の子供達が『白雪姫と七人の小人』で遊んだときも、白雪姫は暴走したんだよ」

ってことは、当時の里の子供達も、このホラー白雪姫を見たのか。

トラウマになっただろうな。

「何で暴走するんだよ。何が悪いんだ?」

「『白雪姫と七人の小人』は、ルールに従わなきゃならないんだ。ルールに則って扱えば、白雪姫が暴走することはない。使用者が『白雪姫と七人の小人』のルールに違反したとき、白雪姫は間違った形で目を覚まし、こうして暴走する」

ルールに違反した…。

それはつまり…。

「ナジュが契約半ばで、水色小人を泣かせて返したり…。さっき珠蓮が、茨の指輪を引きちぎったのが、あれがルール違反か?」

「…多分ね」

成程。確かにルール違反だな。

「そうか。俺のせいなのか…。それは申し訳ない」

「いや、珠蓮のせいじゃないから」

その前に、既にナジュがルール違反かましてるから。

もうその時点で、白雪姫が暴走することは決まっていたのだ。

「本来なら、ルール違反をしたからって、こんな風に暴走したりはしない」

そりゃそうだ。

遊ぶのは子供なんだから。子供が必ずしも、ルールを守って玩具を使うとは限らない。

大人のナジュだって、当たり前のようにルール違反したんだから。

「でも…この『白雪姫と七人の小人』は、失敗作なんだ。色んな意味で…」

「色んな意味って、どういう意味だよ?」

「まず、契約者以外の…」

と、シルナが言いかけたとき。

「ギャオォォォォ!!」

再び、白雪姫が雄叫びをあげて、襲いかかってきた。