神殺しのクロノスタシスⅣ

「何だか騒がしいですけど、何やってるんですか?」

「学院長先生、羽久さん、大丈夫?」

「生徒は授業中なんですよ。静かにしてください」

「あ、お前ら…」

イーニシュフェルト魔導学院教師陣の、ナジュ、天音、イレースの三人が、学院長室に合流。

良かった。

仲間達の姿を見ると、心底ほっとする。

「あ、珠蓮さんじゃないですか。どうも」

「あぁ。久し振り…と言うには、別れたのは最近だな」

全くだよ。

ごめんな?こんな短期間で呼びつけて。

しかも、こんなホラー白雪姫の為に…。

「…」

「何ですか?この気色悪いマネキンは」

襲いかかってこようとする、その姿のまま固まっている白雪姫を見て。

天音は無言で、ごくりと生唾を飲み込み。

イレースはさすがの貫禄を見せ、怯えることなく、怪訝な顔をしていた。

童話のお姫様が、気色悪いマネキン呼ばわりとは。

確かに気色悪いから、言い返せないけど。

更に。

「何やってるの?」

「なんか騒がしいねー」

「あ、お前ら…」

学院長室の窓から、令月とすぐりが現れた。

今は昼間なので、黒装束ではなく制服姿だ。

来てくれたら頼もしい人物ではあるが、今は授業中だろ。

何で来てんだよ。サボるな。

「何でもないから、大丈夫だ」

「何でもない割には、おどろおどろしいものがあるけど」

ホラー白雪姫を見て呟くすぐり。

悪かったな。

それでも、何でもないんだよ。何でもないことにしてくれ。

「大丈夫だよ。今からこれを封印し直して、誰もいない時空の狭間に捨ててくるから…」

と、言いかけたそのとき。

「なんか、今にも動き出しそうですね〜」

物珍しそうに近寄ってきたナジュの、首から肩にかけて。

白雪姫が、がぶりと噛み付いた。

グチャッ、と肉と骨が潰れる音がした。

「ナジュ!!」

嘘だろ、まさか。

俺、ちゃんと時魔法を使ったはずだぞ!?

「こいつ、何で動くんだ…!?」

俺は、再度白雪姫を止めようと杖を握った。

が、その前に。

令月とすぐりの二人が動いた。

目で追えないほどのスピードに、思わず感嘆してしまいそうになる。

令月が常に持ち歩いている小刀が、白雪姫の首に突き刺さり。

すぐりの糸が、白雪姫の胴体を両断しようとした。

しかし。

「!?」

二人の完璧な暗殺の刃は、白雪姫には通じなかった。