神殺しのクロノスタシスⅣ

白雪姫が、突然棺桶から出てきて叫び始めた。

これをホラー展開だと思えば良いのか、アクション展開だと思えば良いのか。

多分両方だ。

叫び声をあげたかと思うと、白雪姫は血走った目を光らせ。

「ガァァァァ!!」

「ひゃーっ!?」

こちらに襲いかかってきた。

何だ、この武闘系白雪姫は。

とてもじゃないが、お淑やかとは言い難い。

俺はシルナを突き飛ばし、俺自身も横に飛んだ。

白雪姫は襲いかかってきた勢いで、壁に激突した。

何やってんだ、こいつは?

学院長室で暴れんな。

かなりの勢いでぶつかったから、これで壊れたか、と思ったが…。

「…ギャァァァァ!!」

そんなことでは怯まず、白雪姫は相変わらず、獣のような雄叫びをあげた。

こんな白雪姫は嫌だ。

もう、童話のお姫様というイメージが彼方に消し飛んだな。

それより。

「シルナ。おいシルナ!!」

「あぎゃばばばば」

「落ち着けよ!」

良い歳したおっさんが、白雪姫にビビるな。

そりゃまぁ確かに、夜中に出てきたら腰を抜かすような形相だが。

「さっき言ったな?過去に白雪姫が暴走したことがあるって。それがこれなのか!?」

「あばばばばそそそそ」

「正気に戻れ!!」

俺は、シルナの後頭部をぶっ叩いた。

すると、シルナはがくがくと首を縦に振った。

「そう、そうだと思う!」

やはりか。

イーニシュフェルトの里の賢者も、ろくでもない玩具を考えたもんだ。

つーか、何で玩具が暴走するんだよ?

「ともかく…お前みたいな節操のない白雪姫は、一生棺桶で眠ってろ!」

俺は杖を振り、得意の時魔法をかけた。

再度こちらに襲いかかろうとしていた白雪姫は、時が止まったようにピタリと制止した。

実際時を止めたのだから、そうなるのも当然だが。

よし。これで無力化。

「今のうちに、また封印し直すぞ」

「いや、あの、羽久。だめ、それ多分、だめなの」

「は?」

駄目って何だよ?

「い、いち、一度、一度めざっ、目覚めたしら、白雪姫をとっ、とっ、止めるには、毒、」

毒?

毒って何のことだ、と首を傾げた、そのとき。